多摩市と府中市の間を流れる多摩川に架かる関戸橋では、橋の架け替え事業が行われています。
2025年11月から11年目の工事が始まりました。今年度秋ごろにかけて、新設した下流側橋の仕上げ工事に進むと見られます。
事業概要
多摩川にかかる関戸橋では橋の架け替え工事が行われています。
下流側橋（旧橋）
関戸橋は多摩川中流部に架かる橋です。通称道路名として鎌倉街道が設定されており、東京都が管理する都道です。
橋は多摩市方面に向かう下流側橋（旧橋）と、府中市方面に向かう上流側橋の2橋がセットになっています。
架け替えの経緯
下流側橋（旧橋）は1937年に架けられた初代の橋で、当初は2車線歩道なしで供用されていました。橋が架けられるまではは「関戸の渡し」という渡し船で行き来していました。その後、周辺の市街化などに伴い、1971年に上流側橋が架けられ、上下線が分離したほか歩道も設置されました。
しかし、下流側橋（旧橋）は架橋から80年以上が経過し老朽化していたことや、耐震対策が未了であったこと、設計車両荷重が大正15年の「内務省土木局の道路構造に関する細則」に準拠していて現行基準を満たしていなかったこと、歩行者通行空間が存在しなかったことなどから、架け替えられることになりました。
架け替えの順序
工事では上流側橋の上流側に仮橋を設置し、交通を切り替えながら架け替えます。仮橋を用いた架け替えは多摩川中流部では初めてとなります。また、併せて上流側橋の改築を行います。
橋の設置や解体工事は多摩川の渇水期となる冬季のみ行われ、工事完了までには16年掛かる予定です。
これまでの経過
新下流側橋の緒元
上部の意匠部が設計変更されているようですのでご注意ください。
上部工 ：鋼7径間連続合成細幅箱桁橋
下部工 ：逆Ｔ式橋台・小判型張出橋脚
全幅員 ：16.000m
有効幅員：15.000m(歩道4.500m、車道10.500m)
支間長 ：44.000m+40.000m+4@60.000m+54.400m
道路橋示方書・同解説Ⅰ～Ⅴ平成29年
最近の発注状況
| 工事 | |||
|---|---|---|---|
| 発注年度 | 工事名称 | 受注者 | 当初契約額（税込） |
| 2015年度 | 関戸橋仮橋設置工事（27南東-関戸橋） | 巴山建設株式会社 | 情報未収集 |
| 2016年度 | 関戸橋仮橋設置工事（28南東-関戸橋） | 巴山建設株式会社 | 情報未収集 |
| 2017年度 | 関戸橋仮橋設置工事（29南東-関戸橋） | 松井・巴山建設共同企業体 | 情報未収集 |
| 2017年度 | 関戸橋架け替えに伴う仮橋舗装工事及び取付道路改修工事（２９南東-関戸橋） | 木本建興株式会社 | 情報未収集 |
| 2017年度 | 関戸橋架け替えに伴う擁壁設置工事（29南東-関戸橋） | 有限会社藤篠 | 情報未収集 |
| 2018年度 | 関戸橋整備工事に伴う取り付け道路改修工事及び排水管設置工事（30北南-関戸橋） | 木本建興株式会社 | 情報未収集 |
| 2018年度 | 関戸橋架け替えに伴う照明設置工事（30南東-関戸橋） | デジタル産業株式会社 | 情報未収集 |
| 2019年度 | 旧橋撤去工事及び下部工事（左岸側）（北南-関戸橋その2） | オリエンタル白石株式会社 | 情報未収集 |
| 2019年度 | 旧橋撤去工事及び下部工事（右岸側）（北南-関戸橋その3） | 株式会社ノバック | 情報未収集 |
| 2019年度 | 関戸橋仮橋補修工事(31南東-関戸橋) | 株式会社ノバック | 情報未収集 |
| 2020年度 | 旧橋撤去工事（北南-関戸橋の4） | 株式会社鴻池組 | 情報未収集 |
| 2020年度 | 仮締切撤去工事及び下部工事（北南-関戸橋の5） | 成友興業株式会社 | 情報未収集 |
| 2020年度 | 旧橋撤去工事（北南-関戸橋の6） | ロード建設株式会社 | 情報未収集 |
| 2021年度 | 旧橋撤去工事（3南東-関戸橋の7） | ノバック・林建設共同企業体 | 情報未収集 |
| 2021年度 | 下流橋下部工事（3南東-関戸橋の8） | 村本建設株式会社 | 情報未収集 |
| 2021年度 | 旧橋撤去工事（3南東-関戸橋の9） | ロード建設株式会社 | 情報未収集 |
| 2022年度 | 下流橋下部工事（4南東-関戸橋の10） | 坂田建設株式会社 | 情報未収集 |
| 2022年度 | 旧橋撤去工事（4南東-関戸橋の11） | ロード建設株式会社 | 情報未収集 |
| 2022年度 | 下流橋下部工事（4南東-関戸橋の12） | 株式会社フジタ | 情報未収集 |
| 2023年度 | 橋脚基礎洗堀防止工事（5北南-関戸橋の13） | ハネイシ建設株式会社 | 情報未収集 |
| 2023年度 | 関戸橋（5）鋼けた製作・架設工事 | 三井住友建設鉄構エンジニアリング株式会社 | 情報未収集 |
| 2023年度 | 関戸橋取付道路路面補修工事（その14） | 株式会社北前建設 | 情報未収集 |
| 2024年度 | 上部仕上げ工事（6北南－関戸橋の14） | 成友興業株式会社 | 739,197,800円 |
| 2025年度 | 橋梁付属物設置工事（7北南-関戸橋の15） | 三井住友建設鉄構エンジニアリング株式会社 | 223,300,000円 |
| 2025年度 | 上流橋塗装除去工事（北南－関戸橋の１） | 株式会社ヤオテック | 134,150,390円 |
| 2025年度 | 道路改修工事及び仮橋舗装工事(７南東－関戸橋) | 2025年11月18日取下げ | - |
| 2025年度 | 取付道路工事（北南－関戸橋の16） | 2026年1月15日開札予定 | |
| 委託 | ||
|---|---|---|
| 発注年度 | 委託名称 | 受注者 |
| ※これ以前は情報収集していません | ||
| 2023年度 | 関戸橋詳細補足設計（その８） | セントラルコンサルタント株式会社 |
| 2024年度 | 関戸橋架替えに伴う道路詳細設計（6南東-関戸橋） | セントラルコンサルタント株式会社 |
| 2024年度 | 関戸橋(上流橋)詳細設計 | セントラルコンサルタント株式会社 |
| 2025年度 | 環境現況調査委託その２（７北南－関戸橋） | 株式会社セルコ |
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タグ：関戸橋架け替え事業
写真等
多摩川の関戸橋では、架け替え事業が行われています。
関戸橋は、1937年架橋の下流側橋（旧橋）と、1971年架橋の上流側橋の2つの橋からなり、下流側橋（旧橋）の架け替えと、上流側橋の一部改築を、全体工期約16年で行う計画です。
今年は11年目にあたります。昨年度に引き続き、下流側橋（新橋）の上部工事が、2025年11月頃から始まっています。
現在行われている工事は、「関戸橋（5）鋼けた製作・架設工事」で、2026年7月2日までの予定で、三井住友建設鉄鋼エンジニアリング株式会社が施工しています。
この工事は昨年度も行われており、その続きの工事となります。
河川区域内の工事は、増水の恐れが高い出水期は行うことができず、多摩川では秋から春にかけての渇水期に行われます。そのため、夏の間は一時中断していました。
11月15日時点で、既に左右両岸で工事ヤードを設置し、作業を再開させていました。
毎年恒例のことになっていますが、今年度も11月5日ごろから、河川管理用通路（サイクリングロード）は工事ヤードを迂回したルートに変更されています。
この看板の工事では、上部工のうち、桁の製作・架設、合成床版の設置までを施工するものとみられます。
昨年度までで桁の架設と、合成床版の一部設置までは完了しているようでした。
現地に掲示されていた写真でも、合成床版架設までが完了していたようです。
現地の状況を見る限り、今年度は合成床版の続きの工事を行うものとみられます。現地には合成床版に用いる鉄筋が搬入され組み立てを行っていました。
今後、配筋工事が終わると、コンクリートを流し込んで、合成床版が完成すると見られます。
今年度このほかにも工事か
2025年11月15日時点で、現地に掲示されていた看板は上記の1枚のみでした。（ほかに国交省の河川工事もあったが）
また、例年10月頃にウェブサイトに掲載される関戸橋の説明会資料やパンフレット「関戸橋通信」が、記事を執筆した11月19日時点になっても掲載されていないため詳細は不明ですが、今年度はこれ以外にも工事を行うものとみられます。
11月19日時点で、下流側新橋に関連する工事は、上記工事のほか2件発注済みです。
| 件名 | 施工者 | 開札・見積日 | 工期 |
|---|---|---|---|
| 上部仕上げ工事（6北南-関戸橋の14） | 成友興業株式会社 | 2025年2月20日 | 契約確定の日の翌日から令和 8年 9月29日まで |
| 橋梁付属物設置工事（7北南-関戸橋の15） | 三井住友建設鉄構エンジニアリング株式会社 | 2025年7月31日 | 契約確定の日の翌日から242日間 |
入札情報サービスの工期から、今年度、あるいは来年度前半にまたがって施工されるものとみられます。
とりわけ「橋梁付属物設置工事（7北南-関戸橋の15）」は、現在施工中の「関戸橋（5）鋼けた製作・架設工事」と連続して実施することで、打ち継ぎ目処理の削減などで費用や工期の削減ができることを理由に特命随意契約しており、今工事と一体となって施工するのは確実と見られます。
上流側橋の改築工事に着手か
そのほか、上流側橋（工事前の府中市方面車線だった橋）でも改築工事に着手するものとみられます。
過去の東京都資料などによると、関戸橋の上流側橋は架け替えの対象ではありませんが、府中市側2径間分は改築を行う計画の模様です。改築により、これまで右折レーンがなかった関戸橋北交差点に右折レーンを設置するものとみられます。
2025年11月15日時点で工事の看板は出ていませんでしたが、既に入札が行われています。
| 件名 | 施工者 | 開札・見積日 | 工期 |
|---|---|---|---|
| 上流橋塗装除去工事（北南－関戸橋の１） | 株式会社ヤオテック | 2025年10月2日 | 契約確定の日の翌日から157日間 |
工事設計書等によると、工事対象となるのは、上流側橋の府中市側から2径間分で、工事内容は現在の塗膜の除去（1種ケレン）です。
塗装工事などを行う際の下地処理を「素地調整（ケレン）」といい、鋼道路橋防食便覧では、1種～4種のケレン方法が定義されています。
そのうち1種ケレンが最も厳しく、現在の塗膜をすべて除去することを指します。
| 素地調整程度 | さび面積 | 塗膜異常面積 | 作業内容 | 作業方法 |
|---|---|---|---|---|
| 1種 | ー | ー | さび、旧塗膜を全て除去し鋼材面を露出させる。 | ブラスト法 |
| 2種 | 30%以上 | ー | 旧塗膜、さびを除去し鋼材面を露出させる。ただし、さび面積30%以下で旧塗膜がB、b塗装系の場合はジンクリッチプライマーやジンクリッチペイントを残し、ほかの旧塗膜を全面除去する。 | ディスクサンダー、ワイヤホイルなどの動力工具と手工具との併用 |
| 3種A | 15~30% | 30%以上 | 活膜は残すが、それ以外の不良部（さび、割れ、膨れ）は除去する。 | 同上 |
| 3種B | 5~15% | 15~30% | 同上 | 同上 |
| 3種C | 5%以下 | 5~15％ | 同上 | 同上 |
| 4種 | ー | 5%以下 | 粉化物、汚れなどを除去する。 | 同上 |
なぜこのタイミングで、塗膜除去だけ発注されているかは現時点で説明はありませんが、特記仕様書によると、現在の塗膜には低濃度PCBが含まれている模様で、この対応と見られます。
PCB（ポリ塩化ビフェニル）は、日本ではカネミ油症事件などで知られる有害物質で、一時期の橋梁塗料で使われていることがありました。安定器などの高濃度PCBは2023年3月31日までで（既に終了）、低濃度PCBは2027年3月31日までの処分が義務付けられています。（現時点では）
なので、仮に来年の渇水期にここの改築をすると、処分期限に間に合わなくなるため、塗膜の除去だけ今年度やってしまおうという考えなのだと推測しています。
橋梁の塗膜は、錆の防止などに意味があるものですが、1年程度なら無塗装でもいいという考えなんですかね。
（同じ時期に塗装しているなら、ここ以外の径間にもPCBが含まれているんじゃないかという疑念はある）
交通切替えはいつ？
下流側橋（新橋）が完成すると、再び交通を切替え、上流側橋の改築に移ることになります。
年間発注予定には、交通切替えに向けた工事と見られるものがいくつか掲載されています。
| 件名 | 履行場所 | 概要 | 公表予定時期 | 履行期限 |
|---|---|---|---|---|
| 【財】【週休２日制確保工事】取付道路工事（7北南-関戸橋の１6） | 府中市住吉二丁目地内から多摩市関戸二丁目地内 | L=800m 橋面舗装工、取付道路工、排水管設置工 工事発注規模：A03 4億円以上6億円未満 | 12月中旬 | 契約確定の日の翌日から220日間 |
| 【財】【週休２日工事】道路改修工事及び仮橋舗装工事（7南東－関戸橋） | 多摩市関戸地内 | 道路改修工事、工事発注規模：A03 4億円以上～6億円未満 | 11月上旬 | 契約確定の日の翌日から260日間 |
詳細は不明ですが、概要記載の内容などから、新橋の舗装と、切替部の工事が含まれているものと思われます。
詳細の公表は現時点ではありませんが、来年度渇水期工事が始まる前までの切替えがあると推測しています。
撮影日：2025年11月15日 記載内容は執筆日または撮影時のものです。変更があった場合も追記できていない場合があります。
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