川崎市多摩区で工事が行われている川崎3・4・4号世田谷町田線(登戸工区)の進捗状況を見て来ました。
このうちJR南武線などをまたぐ登戸陸橋では、2022年に上り線の新しい橋が完成した後は、上下線ともに新橋に切回し、現在は下り線用となる旧橋のうちJR南武線を跨ぐ径間の架替え工事が行われています。
工事は協定に基づき2022年からJR東日本に委託する形で行われていましたが、桁かかり部の配筋が竣工図と異なり、当初設計で施工できないことから、工事を一時中断することとなりました。
事業概要
川崎3・4・4号世田谷町田線は多摩川の多摩水道橋から町田市境に至る都市計画道路です。すべての区間で現道があり、津久井道と呼ばれています。
このうち、多摩水道橋交差点~多摩区役所付近の約820mでは、登戸工区として道路を拡げる事業を行っています。
事業認可は1990年2月16日で、施行者は川崎市です。
※この画像は2018年8月に撮影したものです。現在は事業施行期間が変更されています。
南武線などをまたぐ登戸陸橋に新しい橋を架け、4車線化します。
施行者 | 川崎市 |
延長 | 約820m |
幅員 | 20~27m |
事業施行期間 | 1990年2月16日~2028年3月31日 |
2023年3月31日現在 |
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写真等
JR南武線直上部の架替え等に係る工事は、「南武線登戸・中野島間こ線道路橋上部工架替え工事に関する施行協定」に基づき、JR東日本に委託され、JR東日本が鉄建建設株式会社東京鉄道支店のぼりと作業所に発注して施工されています。
なお、新しい橋桁の製作は川崎市が発注する「多摩区内都市計画道路世田谷町田線道路築造(跨線部上部工桁製作)工事」(施工者:日本ファブテック株式会社)により行われました。
橋桁の撤去・架設は、あらかじめ架設桁を設置したうえで橋桁を吊って移動させる工法で施工されています。
架替えしない桁下には、重荷重を支えるための支持ベントが設置されています。
※市議会資料では既設桁を町田方に移動させる図となっていますが、1月に現場を見た際には世田谷方に移動させていたため、そのような図にしています。
古い橋桁は2023年12月に撤去されすでに現場から搬出されています。
登戸陸橋は一部ゲルバー桁橋となっています。
コンピュータが発達していない時代においては、構造計算のしやすさなどからよく採用された橋桁ですが、走行性や維持管理性、耐震性などに難があることから、近年ではほとんど採用されていません。
川崎市議会10月7日まちづくり委員会に報告された資料によると、既設部の配筋位置が竣工図と異なっていたため、アンカー鉄筋の多くが設計通りに設置できない(約80%)ことが判明したとのことです。
このため新たな施工方法の検討には相当の期間を要し、既に設置済みの仮設材を残置した場合は費用が膨大となる(3500万円/月)ことから、仮設材を撤去し工事を一旦完了する予定となったとのことです。
新たな工法の検討後、再度協定を締結し、工事を再開させる計画です。
登戸陸橋(旧橋)は1957年に完成しました。
建設は神奈川県が行っています。(川崎市の政令市移行は1972年)
市議会委員会答弁によると、当時施工を国鉄に委託していたかは定かではないものの、委託金額が極めて小さいため委託していない可能性があるとのことです。
現在では、鉄筋を組んでコンクリート打設をする前に、鉄筋が正しく配置されているか配筋検査を行いますが、当時その検査の仕組み自体あったかも不明とのことです。
古い工事になればなるほど、図面と現場が異なることは多い印象ではあります。委員会では当時の施工についての責任についての質問もされていましたが、答弁では、弁護士に相談したが相当古いため責任は問えないのではないかとのことでした。
また、施工前の鉄筋探査も、一般的に300mm程度の厚さまでしか探査できません。
2022年6月1日市議会議案資料によると、当初はこの橋桁架替え後、その他の部分の耐震化等を行い、2028年度に4車線供用開始する予定とされていました。
今回の市議会委員会資料では4車線化時期についての説明はなかったものの、全体的に工期が後ろに伸びるのではないかと思われます。
撮影日:2024年10月20日 記載内容は執筆日または撮影時のものです。変更があった場合も追記できていない場合があります。
コメント
60年以上前の橋ともなるとこういうこともあるんですね。
工期は伸びるだろうし費用も増えるだろうから川崎市にとってはとんだ災難ですね。
50年以上前の構造物ともなると、そもそも竣工図が現存していなかったりすることもありますし、あるはずの部材がなかったり、またはその逆もあったりと、小さいものも含めれば割と相違はあるようです。
現在はCADの図面ですが、当時はもちろん手書きの青焼きでしょうし、施工上も現在のような精度でつくられているわけでもないため、月日を経て技術力が上がるにつれてその辺の精度も向上し、今から見ればありえないようなことも起こりうるのかもしれません。
市議会では費用が増えることは報告されており(むしろそれの報告がメイン)、一部委員からは「もう想定外とは言わせない。最初は恣意的に小さく予算を組んであとから大きくしたというのはあってはならない。想定外を想定し予算を組み、あとから増額にならないようにすべきだが、いかがか。」というような質問をされていましたが、あるかどうかもわからないものを何を根拠に予算を取れと言っているのか意味不明ですし、逆にそれが想定内であれば余分な予算を付けることにもなるのに、予算を採決する立場の議員がこのようなことを言うのはまるで意味不明でした。
また、その委員の会派は当時、当初協定締結の議案を賛成していましたが、そういうのであればその際にそういう理由をつけて反対しておくべきです。
いつまでやってんだよ。
竣工33年で始めた架け替え工事に40年かけるとか出来上がったときにはもう老朽化してまたすぐに作り直しだろう。
前代未聞の大失敗でマネジメントの欠如。
川崎市に直接言ってください。
2009年のストリートビューを見てもわかりますが、用地の取得に20年程度を要しており、これが事業が伸びている大きな要因です。用地取得後はコンスタントに工事発注がされていますが、鉄道が絡んでいるため、通常の橋梁よりも時間を要しています。
川崎市の第2次道路整備プログラムにおいて土地収用制度の活用が明記されましたが、それまで積極的な活用をしてこなかったとは聞いたことがあります。(が、改めて調べても明確なソースが見つからないため、聞いたことがある程度におさめておきます)
いつもありがとうございます。Facebookのご近所グループでシェアさせていただきました。
先が4車線化したので前よりか流れはマシになりましたが、ゆっくり文句言われながら20年後ぐらいに開通ですかね。その時は今の方を点検するとかいって、永遠に4車線化は出来なさそうですね。
4車線化の見通しについて公表されていないためあくまでも想像になりますが、順調にいけば2年程度の延長で2030年ごろになるのではないかなと思います。
この部分の架け替えのあと、これ以外の部分の耐震・耐荷等工事を市施行で行う予定で、ここでも似たような相違が出てくると伸びるかもしれません。
ここ、よく通るんですが、進捗が異常に遅いなと思っていたら、これが原因だったのか!?
分かってスッキリはしたけど、こうなると、完成した上り側は大丈夫なのか?
全部やり直しにならないのか?
鉄道が絡んでいるので通常の橋梁工事より時間を要していますが、通り際だけで異常に遅いと感じられるのはすごいと思います。