世田谷区と川崎市中原区の間を流れる多摩川で建設中の等々力大橋（仮称）と、その前後の放射第3号線および川崎3・3・10号宮内新横浜線の進捗状況を見てきました。
等々力大橋（仮称）では、P2橋脚まわりの護床工事が始まっています。
また、東京都側では、土地収用法の事業認定に向けた動きと見られる委託が複数発注されています。進まない用地取得に対する対応と見られます。
事業概要
目黒通りを延伸し、多摩川に橋を架け、川崎市側も道路を新設する事業が行われています。
東京都側の都市計画道路名は「放射第3号線」、神奈川県側の都市計画道路名は「川崎3・3・10号宮内新横浜線」で、橋の名前は「（仮称）等々力大橋」です。
放射第3号線
放射第3号線は港区芝白金台町一丁目から世田谷区玉堤二丁目神奈川県界に至る延長約10,000mの都市計画道路です。このうち、等々力不動前交差点から多摩堤通りに至る延長約775mで事業を行っています。
事業認可は1990年6月28日で、施行者は東京都です。
幅員25～33mで、片側2車線の道路となる計画です。
基本データ
| 施行者 | 東京都 |
| 延長 | 約775m |
| 幅員 | 25～32m |
| 事業施行期間 | 1990年6月28日～？ |
| 2020年7月26日現在 | |
用地取得率の推移
※データ出典は各点にカーソルに合わせた際に表示します。
※取得できたデータのみ表示しています。
※市議会答弁は日付の言及があるものはその日付、ないものは発言の日時点
最近の発注状況
| 工事 | |||
|---|---|---|---|
| 発注年度 | 工事名称 | 受注者 | 当初契約額（税込） |
| ※これ以前は情報収集していません | |||
| 2023年度 | 5二-等々力大橋(仮称)取付道路（目黒通り）擁壁設置工事その2 | 株式会社サンプラン | |
| 2025年度 | 等々力大橋（仮称）整備に伴う谷沢川橋（仮称）下部工事及びアプローチ橋（仮称）下部工事その２ | 株式会社ＭＩＣ | 229,955,000円 |
| 委託 | |||
|---|---|---|---|
| 委託については、等々力大橋の項目に記載しています。 |
川崎3・3・10号宮内新横浜線ほか
川崎3・3・10号宮内新横浜線は川崎市中原区宮内1丁目（東京都界）から川崎市高津区蟹ヶ谷悝槍ヶ崎（横浜市界）に至る延長約4,560mの都市計画道路です。このうち、宮内1丁目、2丁目地内の約720mで事業を行っています。
また、これに関連する街路として、川崎3・4・3号鹿嶋田菅線や、市道幸多摩線などの事業も行っています。
事業認可は2011年1月4日で、施行者は川崎市です。
幅員22～34mで4車線となる計画です。
基本データ
| 施行者 | 川崎市 |
| 延長 | 約720m（宮内新横浜線のみ） |
| 幅員 | 22～34m |
| 事業施行期間 | 2011年1月4日～2031年3月31日 |
| 2021年3月30日現在 | |
最近の発注状況
| 工事 | ||
|---|---|---|
| 発注年度 | 工事名称 | 受注者 |
| ※これ以前は情報収集していません | ||
| 2023年度 | 中原区内主要地方道幸多摩線道路築造工事 | 浅川建設工業株式会社 |
| 2024年度 | かわさき多摩川ふれあいロード（宮内地区）改良工事 | 2025年2月4日開札予定 |
| 委託 | ||
|---|---|---|
| 発注年度 | 委託名称 | 受注者 |
| ※これ以前は情報収集していません | ||
| 2020年度 | 都市計画道路宮内新横浜線（仮称）等々力大橋交差点設計委託 | 日本都市整備 株式会社 川崎営業所 |
| 2023年度 | 中原区都市計画道路宮内新横浜線（宮内工区）一般構造物詳細設計（その２）委託 | 日本エンジニアリング 株式会社 川崎支店 |
| 2023年度 | 中原区内都市計画道路宮内新横浜線（宮内工区）詳細設計委託 | 東洋技研コンサルタント 株式会社 神奈川営業所 |
（仮称）等々力大橋
多摩川を横断し、東京都世田谷区と神奈川県川崎市中原区を結ぶ橋として事業が行われています。
事業主体は東京都・川崎市、施行主体は東京都です。橋長は約390mで、鋼4径間連続鋼床版箱桁橋となります。
基本データ
| 事業主体 | 東京都・川崎市 |
| 施行主体 | 東京都 |
| 延長 | 約390m |
| 上部工形式 | 鋼4径間連続鋼床版箱桁橋（ケーブル補剛） |
| 下部工形式 | 橋台 2基（場所打ち杭） |
| 橋脚 3基（ニューマチックケーソン） | |
| 2020年7月26日現在 | |
最近の発注状況
| 工事 | |||
|---|---|---|---|
| 発注年度 | 工事名称 | 受注者 | 当初契約額（税込） |
| ※これ以前は情報収集していません | |||
| 2020年度 | 等々力大橋（仮称）下部工事（その1） ただし途中で契約終了し施工されず | 飛島建設株式会社 | |
| 2021年度 | 等々力大橋（仮称）下部工事（その2） | 日本国土開発株式会社 | |
| 2021年度 | 等々力大橋（仮称）下部工事（その3） | 松鶴建設株式会社 | |
| 2022年度 | 等々力大橋（仮称）左岸低水護岸設置工事 | 巴山建設株式会社 | |
| 2022年度 | 等々力大橋（仮称）下部工事（その4） | 大豊建設株式会社 | |
| 2023年度 | 等々力大橋（仮称）（5）下部工事 | 清水建設株式会社 | |
| 2024年度 | 等々力大橋（仮称）p2護床工設置工事その2 | ＣＲＳ株式会社 | |
| 委託 | |||
|---|---|---|---|
| 発注年度 | 委託名称 | 受注者 | 当初契約額（税込） |
| ※これ以前は情報収集していません。 | |||
| 2023年度 | 等々力大橋(仮称)取付部地質調査(その2) | 株式会社エイト日本技術開発 | |
| 2023年度 | 等々力大橋(仮称)取付道路詳細修正設計 | 株式会社エイト日本技術開発 | |
| 2023年度 | 等々力大橋(仮称)取付道路橋梁詳細修正設計 | 株式会社エイト日本技術開発 | |
| 2023年度 | 等々力大橋(仮称)BIM/CIMによる施工検討 | 株式会社エイト日本技術開発 | |
| 2023年度 | 等々力大橋（仮称）P2橋脚護床工詳細修正設計 | 株式会社エイト日本技術開発 | |
| 2023年度 | 等々力大橋（仮称）事業認定申請等設計 | 株式会社エイト日本技術開発 | |
| 2024年度 | 等々力大橋（仮称）上部工詳細修正設計（架設検討） | 株式会社エイト日本技術開発 | |
| 2024年度 | 等々力大橋（仮称）多摩堤通り道路予備修正設計 | 株式会社エイト日本技術開発 | |
| 2025年度 | 等々力大橋（仮称）事業計画書等作成委託 | 株式会社エイト日本技術開発 | |
| 2025年度 | 等々力大橋（仮称）費用便益分析業務 | 株式会社東京建設コンサルタント | |
| 2025年度 | 等々力大橋（仮称）上部工詳細修正設計（付属物等景観検討） | 株式会社エイト日本技術開発 | 18,788,000円 |
| 2025年度 | 事業事前説明会新聞公告掲載委託 等々力大橋（仮称）その1 | 株式会社読売Ｐａｌｅｔｔｅ | 874,500円 |
| 2025年度 | 事業事前説明会新聞公告掲載委託 等々力大橋（仮称）その２ | 株式会社朝日広告社 | 1,199,000円 |
| 2025年度 | 事業事前説明会に伴う託児保育サービス委託【等々力大橋（仮称）】 | 株式会社明日香 | 66,000円 |
この枠内の情報は随時更新されます。記事本文の情報と枠内の情報に時間的差異が生じる場合があります。
この道路の記事一覧
進捗状況
東京都側（放射第3号線ほか）
撮影位置はこの通りです。（周辺のGoogleマップ）
東京都側の目黒通りとして親しまれている都市計画道路放射第3号線です。
放射第3号線の用地はずいぶんと前からほとんど取得されているようですが、工事は昨年度ようやく始まった程度です。
写真①左側の工事現場事務所は、隣接して工事が行われている谷沢川分水路放流施設工事の現場事務所で、放射第3号線の道路予定地に設置されています。（東京都建設局の工事）
この路線の東京都側では、昨年度初めて工事が発注され、橋に至るアプローチ部の将来上り線側の擁壁の一部が設置されました。
工事件名は「5二-等々力大橋（仮称）取付道路（目黒通り）擁壁設置工事その2」で、株式会社サンプランが施工しました。
この工事では、将来の上り線側道となる部分に工事用道路の設置も行われているほか、擁壁の道路側に盛土がされています。
この付近は、多摩堤通りが多摩川の堤防上に存在するため、放射第3号線は堤防に向かって登って接続することになります。また、多摩堤通りは、レーン等を確保するため拡幅する計画です。
近隣に流れている谷沢川を横断する橋梁のほか、側道と交差するための橋梁を整備する必要があり、2025年10月9日にはこの橋梁の工事の入札が実施されました。
工事件名は、「等々力大橋（仮称）整備に伴う谷沢川橋（仮称）下部工事及びアプロ―チ橋（仮称）下部工事その2」で、株式会社MICが落札しています。入札情報サービスによると、工期は2026年10月2日までです。現在は現場未着手です。
※「その2」となっているのは、2025年7月31日に行われた1回目の入札で不調となったため
この工事では、
・谷沢川橋（仮称）の橋台2基の設置
・アプローチ橋（仮称）のうち将来上り線側の橋台2基の現場打杭工
などを施工する模様です。
今回建設される谷沢川橋（仮称）は、多摩堤通りの将来丸子橋方面車線となる道路の橋梁と見られます。
多摩堤通りに関連する工事が行われるのは、これが初めてです。
設計図書によると、今回施工されるアプローチ橋（仮称）は、全体の半分程度となる模様です。将来川崎方面車線は現道と重なるため施工できないものと思われますが、今後道路の切回しなど複雑な工程となると想像しています。
ところで、等々力大橋（仮称）のA1橋台は現在も未施工で、A1橋台は現道と重なることから、施工には多摩堤通りの切回しや拡幅が不可欠となります。
東京都のサイトによると、2025年4月1日時点の多摩堤通り（主要地方道11号大田調布線）の用地取得率は62%で、1年前と変化がありません。
協定により東京都と事業を進めている川崎市の2023年市議会委員会資料によると、「都では用地交渉の体制強化を図り、必要な用地を確保」することとしています。
一方、多摩堤通りは都市計画道路ではなく、土地収用法の規定が適用される都市計画事業でもないため、土地収用法を活用した用地取得ができません。したがって、これまで任意の交渉による用地取得を進めてきたものとみられます。
このためか、土地収用制度を活用するための土地収用法の事業認定取得に向けたと見られる業務委託が複数発注されています。
| 2023年度 | 等々力大橋（仮称）事業認定申請等設計 | 株式会社エイト日本技術開発 |
| 2025年度 | 等々力大橋（仮称）事業計画書等作成委託 | 株式会社エイト日本技術開発 |
| 2025年度 | 等々力大橋（仮称）費用便益分析業務 | 株式会社東京建設コンサルタント |
| 2025年度 | 事業事前説明会新聞公告掲載委託 等々力大橋（仮称）その1 | 株式会社読売Ｐａｌｅｔｔｅ |
| 2025年度 | 事業事前説明会新聞公告掲載委託 等々力大橋（仮称）その２ | 株式会社朝日広告社 |
| 2025年度 | 事業事前説明会に伴う託児保育サービス委託【等々力大橋（仮称）】 | 株式会社明日香 |
土地収用法の事業認定が国土交通大臣からなされると、収用裁決の手続きを行うことができます。（収用手続きの流れについては東京都収用委員会のサイトを参照のこと）
なお、土地収用法では、事業認定を受けようとする起業者（この場合は東京都）は、説明会の開催、新聞紙への公告等を講じて、利害関係者に説明しなければならないとされています。（法第15条の14、同法施行規則第1条の2）
委託では、新聞紙への公告掲載のほか、事前説明会関連の委託も発注されていることから、事業認定を行う方向でいるものとみられます。
現地の状況を見る限り、集合住宅を含めてかなりの戸数が残っている状況です。
等々力大橋（仮称）
多摩川を横断する等々力大橋（仮称）では、今年度はP2橋脚の護床工が施工されています。
工事件名は「等々力大橋（仮称）P2護床工設置工事その2」で、2026年6月中旬までの予定で、CRS株式会社が施工しています。
※その1は入札公表されたが取り消された。
護床工は、橋脚の足元に根固めブロックというコンクリートのブロックを敷き詰める工事です。
工事は東京都側から仮桟橋を設置して施工される計画で、11月15日時点で、高水敷にヤードの設置が進められていました。
河川区域内の工事は秋から春にかけての渇水期しか施工することができないため、少しずつ施工を進めている状況で、この日は土曜日でしたが準備を進めていました。
川崎3・3・10号宮内新横浜線ほか
撮影位置はこの通りです。
今回の等々力大橋（仮称）の工事は東京都側から施工されるため、川崎市側は大きな変化はありません。
川崎市側の多摩沿線道路との交差部分で施工された、A2橋台と函渠周りは、あれから大きな変化はありません。
今後は多摩沿線道路を切回しながらかさ上げし、周辺の整備を進めていくものと思われます。
川崎3・3・10号宮内新横浜線（宮内工区）は、引き続き用地の取得が進められています。
川崎市のウェブサイトによると、2025年3月末時点の事業用地取得進捗率は60%で、1年前から1ポイント増加しました。
川崎市側は、用地の進み具合が全然変わっていません。
西下橋交差点から見た景色も大きく変化がありません。道路予定地には、周辺への移転先を見つけるのが難しそうな工場もあるため、用地取得は難航すると見られます。
『第2次川崎市道路整備プログラム～後期の取組【R4～R11】～』では、等々力大橋は2025年度（R7）までの完成、宮内新横浜線は2029年度（R11）も取組み継続とされていました。
11月14日に行われた市議会まちづくり委員会資料によると、今年度、このプログラムの取組みを「後期②の取組」としてまとめる計画で、12月頃からパブリックコメントが実施される模様です。
それによると、等々力大橋については、先の東京都側の用地取得の遅れなどから2029年度（R11）も取組み継続とし、宮内新横浜線についても取組み継続とするようです。
川崎市は等々力大橋と宮内新横浜線の進め方は別と考えているのか、これまでも同時開通については明言していません。事業効果を発揮させるためにも同時開通させるよう努力すべきだとおもいますけどねぇ。
撮影日：2025年11月15日 記載内容は執筆日または撮影時のものです。変更があった場合も追記できていない場合があります。
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