白線の間隔が最大90cmに 間隔の広い横断歩道が登場 

福島県福島市間隔の広い横断歩道が設置されたと聞いて見て来ました。

場所は福島県福島市森合町。福島駅から北へ15分ほど歩いた交差点です。

交差点付近には県立福島高校、県立聴覚支援学校、県立視覚支援学校などがあります。

間隔の広い横断歩道(手前)

この交差点の手前側が白線の間隔の広くなった横断歩道で、奥はこれまでの間隔の横断歩道です。従来の横断歩道を消したうえで、新しく線を書き直したようです。

報道によると福島県初の事例とのことです。全国的にも早いと思われます。

これは、2024年7月26日に道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」が改正施行され、白線の間隔を従来の45~50cmから、45~90cmに変更されたことに伴うものです。

この交差点では間隔を約90cmと、これまでの倍の間隔で書かれています。

白線の間隔が広い横断歩道
従来の間隔の横断歩道

比較としてこれまでの横断歩道と並べてみるとこんな感じ。

これまで8本引かれていた線が6本に削減されています。

車視点

車視点で見るとこんな感じ。

古い線を削り消した跡が残っていて少しわかりにくさはありますが、横断歩道であることは認識できそうです。

この省令の改正に際して、自動車安全運転センターが横断歩道の間隔について調査研究を行っています。
この研究の目的に、「横断歩道標示の白線設置間隔(現状 45cm 程度)を拡大することにより、横断歩道標示の設置及び維持管理に要する費用等を削減し、その分、多数の横断歩道の適切な維持管理を行うことで横断歩道における交通安全に寄与できないかという視点に立ち、適切な横断歩道標示の在り方についての検討を行うこととした」とあるように、この省令の改正は維持管理費用の縮減が主な目的にようで、省令改正同日に警察庁から発せられた通達にも「車両等の通行を避けて白線を配置できるなど、横断歩道及び斜め横断可の整備及び更新に係る費用の合理化に資する」と記載されています。

また、通達には「一律に白線の設置間隔の拡大を求めるものではない。」とされています。

改正同日に改正された「交通規制基準」では、

・白線と白線の設置間隔は、道路形状や交通状況等に応じて45センチメートル~90センチメートルの間から選択することができる。ただし、白線と白線の設置間隔が51センチメートル標設置以上の道路標示は、白線を5本以上配置できる場合に限り設置することができるものとする。
・単一の道路標示における白線と白線の設置間隔は等間隔を原則とする。ただし、車両等の示 通行による摩耗を避けるなどの必要がある場合は、白線と白線の設置間隔に10センチメートル以内の差異を設けることができるものとする。

とされ、間隔が広がったことで極端に白線の本数が少ない横断歩道とならないようにすることを求めているほか、タイヤが載る位置を避けるために少し位置をずらすことを許容する内容となっています。

また、同日発せられた別の通達では、

この改正に関し、先般行った意見募集においては、「白線の設置間隔を拡大すると、塗料の凹凸を足で感じて横断歩道を認識している視覚障害者や視力の弱い人が横断歩道を認識しにくくなるのではないか。」といった意見が多く寄せられたところである。こうした意見も踏まえ、白線の設置間隔を拡大した横断歩道又は斜め横断可を表示する道路標示(以下「白線の設置間隔を拡大した横断歩道等」という。)を設置する際には、音響信号機とエスコートゾーンが設置されている場所について関係者の意見を聴取しつつ、設置を検討するなど、視覚障害者の安全な横断に十分配意すること。
 また、白線の設置間隔を拡大した横断歩道等を設けた場合には、地域住民、学童、学校関係者、視覚障害者等の関係者に向けて、当該横断歩道等を実際に横断する機会を設けるなどの取組に努めること。

としています。

この福島県の場所にも音響信号機とエスコートゾーンが設置されているほか、報道によると隣接する県立視覚支援学校の生徒らによる体験会を実施したとのことです。

ちなみに今回の改正で、横断歩道の両脇の側線(ハシゴ型)が規定から完全に抹消されました。1992年の改正で側線のない横断歩道(ゼブラ型)が誕生し、ハシゴ型は現在ではほとんど見なくなりましたが、ようやく規定から完全削除という形になりました。ただし現在残っているハシゴ型が無効になったわけではありません。

警察庁では、これまでも信号機設置の合理化などをしてきていますが、今回の省令改正では横断歩道標識について省略できる場合を規定しています(詳細は割愛)。2023年10月20日には「持続可能な交通規制の推進について(通達)」を発出し、必要性の低下した交通規制の改廃や道路標識の撤去など合理化を図ることを求めています。

こうしたコスト縮減による持続可能性を図る取り組みは、警察のみならず道路行政でも今後も行われていくものと思われますが、必要なものは必要としっかりと予算措置を図ってほしいと思うものです。

撮影日:2024年11月2日 記載内容は執筆日または撮影時のものです。変更があった場合も追記できていない場合があります。

コメント

  1. あるくむ より:

    このルール変更を知りませんでした。面白いです。先進諸外国の事情と比べてみたい。ただ、視覚障害者への配慮だけはしっかり取り組んでもらいたいですね。
    これと似た話で灰色や白色の点字ブロックの問題を思い出します。本来は横断歩道上に設置する製品を歩道や建物外構部へ景観目的で使う。しかし視覚障害者の大多数は全盲ではなく弱視。視力の弱い人も含めて、点字形状よりも黄色が重要だそうですから、極めて誤った使用と言えます。
    そういう配慮の乏しさから事故が起こらないよう、当事者を巻き込んだ議論が深まると良いですね。

    • yunomi-chawan yunomi-chawan より:

      点字ブロックは必ずしも黄色である必要はありません。まわりとの輝度比が重要になります。
      国土交通省の『道路の移動等円滑化に関するガイドライン』でも、「視覚障害者誘導用ブロックの色は、黄色その他の周囲の路面との輝度比が大きいこと等により当該ブロック部分を容易に識別できる色とするものとする。」とされ、黄色とは限っていません。


      たとえば、点字ブロックと似た色の床を採用したこの駅では、点字ブロックのまわりに輝度の低い床材で縁取ることで、輝度比を確保しています。


      こちらの交通広場の場合、一見この黄色はほかのグレー系インターロッキングブロック舗装と異なり目立っているように見えますが、薄いグレーのブロックと輝度が近いため、ブロック回りに濃いグレーのブロックを挟んで輝度比を確保しています。


      こちらの公園の場合は点字ブロックが濃いパターンですが、輝度比は確保されています。


      仰りたいのはこういう例だと思いますが、これはそもそも点字ブロックが健常者でも見えにくく、向きもデタラメ、危険であるはずの軌道を横断する部分の舗装も他の部分と同系色でよくない例です。

      弱視にもいろいろな見え方があるようですから、これだけと基準に当てはめるのではなく、現場や環境に応じてよいものを考えていく必要があると思います。

      なお、横断歩道に設置するものはエスコートゾーンといい、点字ブロックとは異なる形状で、点字ブロックとは別物です。

  2. 横断くん より:

    うーん、今までの横断歩道に比べて車を運転する側からみて横断歩道だと認識しずらくなっちゃったなぁ

    • yunomi-chawan yunomi-chawan より:

      これが本当に見づらいのか、意識しているからそう感じるのか等々、これを知っている立場からはわからないので、この変更を知らずに通った人にどう感じたかは聞いてみたいですね。
      自動車安全運転センターが同様のアンケート試験をしているようですが、試験場と現場ではまた環境が違うと思うので。

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