2023年8月、JR南武線の谷保駅~立川駅間の連続立体交差事業に向け、都市計画素案説明会が開かれていました。
5年前の2018年に、「南武線(立川駅付近~矢川駅付近)連続立体化の機運高まるか?」なる記事を投稿していたところですが、やっと一歩前進しました。
事業範囲
事業予定区間
都市計画素案説明会資料等によると、都市計画区間は谷保駅付近~立川駅付近の約4.2kmの区間で、このうち約3.7kmが事業予定区間となっています。
この区間にある19箇所の踏切道が除却または廃止される予定です。また、この区間内には2本の優先整備路線(※)に選定されている都市計画道路と交差する計画です。(※)2016年に策定された『東京における都市計画道路の整備方針(第四次事業化計画)』において、優先的に整備すべき路線として選定された都市計画道路の区間
連続立体交差事業とは、市街地において道路と交差している鉄道を一定区間連続して高架化又は地下化することで立体化を行い、多数の踏切の除却や新設交差道路との立体交差を一挙に実現する都市計画事業のことで、「道路整備」の一環として行われる都市計画事業です。
過去の経緯
東京都が2004年6月に策定した『踏切対策基本方針』において、矢川踏切~羽衣踏切間が「鉄道立体化の検討対象区間」として選定されました。
この区間は2012年9月に東京都の「事業候補区間」に選定され、東京都は2013年度(平成25年度)から事業範囲や構造形式の検討を行っていました。
2018年から国の連続立体交差事業の新規着工準備箇所として選定されていました。
これまで、東京都の各資料や、国立市議会の答弁等では、立体交差区間を矢川駅の東側(国立市役所前踏切付近)からとしているものが多かったですが、今回の都市計画素案では谷保駅も含む形(谷保駅は立体化しない)に改められています。
国立市では、2018年6月に改訂した『国立市都市計画マスタープラン第2次改訂版』において、南武線の連続立体交差化促進が明記されました。2022年3月には、鉄道が⽴体化された後のまちの将来像や⽅針を⽰すため、「南武線沿線まちづくり方針」を策定しています。
立川市では、現行都市計画マスタープランである2018年6月改定の『立川市都市計画マスタープラン』において、JR南武線の鉄道立体化の促進が書かれています。2022年3月には、『西国立駅周辺地域まちづくり構想』を策定し、JR南武線の鉄道立体化を見据えた西国立駅周辺地域のまちづくりに取組む際の指針とするものとしています。
立体化方法
都市計画素案説明会資料等によると、立体交差方法は嵩上式(高架方式)によるものとしています。地下方式に比べ、立体化後の通行不能となる道路が少ないこと、事業費が少ないことなどが、この方法となった理由として挙げられています。
また、高架は、現況鉄道を一旦仮線に移設し、現況部分に高架を築造する「仮線方式」とするものと書かれています。稲城市内の南武線などで採用された方法で、高架方式では多く採用されている方法です(特にJR東日本では多い気がします)。
現在の状況
谷保駅~矢川駅間
谷保駅
事業予定区間の東端付近にある谷保駅です。
対面式ホーム2面2線で、橋上駅舎となっています。最近は駅員が不在の時間が多いです。
以前はバリアフリー設備が備わっていませんでしたが、2015年3月22日にラチ内エレベータと多機能トイレが供用開始され、2016年3月10日からラチ外エレベータも供用開始されています。エレベータ供用前は、車いす利用者などはホームから道路に出られる通路を駅係員に誘導のもと利用していたような記憶です。
駅の北側は、旧日本住宅公団が施行した富士見台地区土地区画整理事業により基盤整備がされており、交通広場も整備されています。
駅の南側は甲州街道が近くを通り、周辺は車1台分程度の幅の狭い道路が多い状況です。
天神前踏切
谷保駅の立川方の天神前踏切(31k655m)です。都道146号国立停車場谷保線146と交差します。
事業予定区間に入っていますが、この踏切はこのまま残される予定です。
この付近から高架に向けたスロープが建設される計画です。
現況周辺はほぼ平坦です。
この先の青柳踏切付近まで、南武線に沿って生活道路が整備されています。
都市計画素案説明会資料によると、南武線の高架化後、現況側道とほぼ同じ位置に付属街路が整備される予定となっています。
なお、南武線の仮線は線路北側に建設される予定のため、現況道路の仮設道路が設けられる可能性があります。
湯の院踏切
31k823mにある滝の院踏切です。積2t以上の通行は規制されています。
高架化後は、鉄道スロープの建設等の関係で、廃止される計画です。
坂下第一踏切
31k927mにある坂下第一踏切です。自動車、自動二輪の通行は規制され、自転車歩行者専用となっています。
この踏切も、高架化後は廃止される計画です。
谷保駅~矢川駅間は距離に対して踏切数が非常に多く、1947年の航空写真を見る限り、当時と比べて踏切数はほとんど変わってないように見えます(1箇所減?)。
谷保駅にエレベータが整備された際の市の広報に、JR東日本八王子支社と市が確認した事項として、「JR南武線谷保駅周辺の人道踏切について、踏切事故防止等安全上の観点から、将来的な南部地域の地域整備や道路整備状況に合わせ、廃止の可能性について検討していくこと。」と書かれていました。
坂下第二踏切
31k993mにある坂下第二踏切です。この踏切から高架となる計画です。
なお、この踏切は、通行できる車両の高さに制限がかかる計画です。
この踏切についても、積2t以上の通行が規制されています。踏切の先の道路も、車1台分程度の幅しかない状況です。国立市では、この鉄道南側の区域について、上記2箇所の踏切廃止に伴うルート確保としても、東西交通の強化のために道路整備を行う方針を示しています。
昇松踏切
32k149mにある昇松踏切です。
自動車及び自動二輪車の通行が規制されており、自転車歩行のみ通行可能となっています。
この踏切についても、高架化後に通行できる車両の高さに制限がかかる計画とされています。なお、高架化後、自動車等が通行可能かどうかはよくわかりません。
国立市役所前踏切
32k253mにある国立市役所前踏切です。どちらかというと、昇松踏切の方が市役所の前ではあります。
この踏切では、国立3・4・14号国立砂川線と交差しています。この都市計画道路は、この踏切から北側約450mのみ整備済みです。
踏切から南側の都市計画道路は未整備で、幅員5m程度の狭い箇所も存在しますが、南武線を越えられるまともな道路が少ないこともあり、交通量はやや多い道路となっています。
東京都や市区町が2016年に策定した『東京における都市計画道路の整備方針(第四次事業化計画)』においては、この踏切から南側の区間が優先整備路線に選定しています。都市計画素案説明会では、この都市計画道路の都市計画変更は行わず、連続立体交差事業に合わせ、甲州街道までの区間を整備する予定としています。
国立市役所前踏切の立川側で、多摩川の河岸段丘により下り坂となっています。
当初は、この下り坂を利用し、この付近から高架化するような話が出ていました。
中平一号踏切
32k468mにある中平一号踏切です。
この踏切は積3t以上の通行が規制されているほか、北から南に向かう方向に向けて一方通行となっています。
中平二号踏切
32k618mにある中平二号踏切です。
道路交通法上の制限はありませんが、踏切の前に階段があるため、歩行者以外通行できません。
久保一号踏切
32k764mにある久保一号踏切です。
積2t以上の通行が規制されています。
久保二号踏切
32k870mにある久保二号踏切です。
自動車及び自動二輪車の通行が規制されています。
矢川踏切
32k927mにある矢川踏切です。矢川駅のすぐ川崎側にあります。
矢川通りと交差しており、交通量が多い踏切の1つです。
都市計画道路は南武線から北側のみですが、南側についても道路整備が完了していて、この先歩道がある道路が続いています。
緊急輸送道路(二次路線)に指定されています。
緊急に対策の検討が必要な踏切(カルテ踏切)に指定されています。ピーク時には1時間当たり30分の遮断があるとされています。
矢川駅~西国立駅間
矢川駅
矢川駅には、北側に交通広場が整備されています。
駅舎は橋上駅舎で、2011年に建て替えられています。
ホームは島式で幅が非常に狭いのが特徴です。立川行きの電車に対しては、ホームの手前にカーブがある関係か、45km/hの規制が掛けられており、通過電車も速度を落としています。
高架化後も島式ホームとなる計画で、計画図を見る限り、若干南側に線路を振るようです。速度の規制も解消するでしょうか。
駅の南側は自動車1台分程度の幅の道路が多いほか、農地も広がっている状況で未整備な部分が多いです。国立市においては、2022年3月に策定した「南武線沿線まちづくり方針」において駅南側に交通広場を整備する等の基盤整備を検討しているほか、現在「矢川駅周辺基盤整備計画(仮称)」の策定を行っているところです。
矢川二号踏切
33k135mにある矢川二号踏切です。
積3t以上の通行が規制されています。
踏切がやや高い位置にあるため、特に線路北側では、交差道路がかまぼこ状になっています。
この踏切の北側には、公共複合施設「矢川プラス」が2023年4月に開館しています。
国立3・3・15号中新田立川線予定地
矢川二号踏切~矢川三号踏切間で、国立3・3・15号中新田立川線と交差します。
甲州街道~都道145号までの区間が優先整備路線に選定されています。
この都市計画道路は、多摩南北主要5路線のうちの1つで、東京都が特に整備を進めている都市計画道路の一部です。隣の立川市内では、都道145号~芋窪街道までの区間は、2022年3月に事業化しています。
この踏切付近は、都営住宅の整備等に伴い、道路予定地が確保されています。
東京都では、この都市計画道路の都市計画変更を行う予定で、別途説明会を開催予定です。
また、東京女子体育大学周辺一帯は、1961年に都市計画決定した矢川上土地区画整理事業の都市計画がされています。国立市ではこの都市計画の廃止の方向で、地域と話し合いを行っています。(参考)
矢川三号踏切
33k256mにある矢川三号踏切です。
一部車両の通行が制限されているほか、国立第六小学校が近いため、一部時間帯は歩行者専用道となります。
国立3・4・5号立川青梅線予定地
矢川三号踏切~青柳踏切間で、国立3・4・5号立川青梅線と交差します。
谷保駅北側でさくら通りとして供用されている道路の西側で、この先日野橋交差点方面に計画されているものの、一部を除き未整備となっています。
また、日野橋交差点の先までの区間は、一部完成区間を除き、優先整備路線に選定されています。
この道路を東側に進むと、約2.3km先で未整備となりますが、現在、東八道路に接続するように事業中です。
東京都では、この都市計画道路の都市計画変更を行う予定で、別途説明会を開催予定です。
連続立体交差事業は、上記都市計画道路と合わせた2路線の整備を目的としたような趣が強いものと思われます。
青柳踏切
33k597mにある青柳踏切です。国立市と立川市の境界にあたります。
幅員は狭いものの、抜け道として利用されており、交通量は比較的多いです。
ピーク時の踏切遮断時間は41分で、定義上は開かずの踏切となり、緊急に対策の検討が必要な踏切(カルテ踏切)に指定されています。
この踏切の立川側には、多摩川の河岸段丘があり、立川方面に向けて上り坂となっています。
この右側(東側)は、現在西国立駅に隣接して存在する保守基地の高架化後の移設先となる計画です。保守基地も高架化されるようです。
中学校前踏切
33k904mにある中学校踏切です。
向郷踏切
34k042mにある向郷踏切です。
立川南通りとして親しまれている市道と交差します。緊急輸送道路(二次路線)に指定されています。
緊急に対策の検討が必要な踏切(カルテ踏切)に指定されています。
この現況道路と重なるように立川3・5・6号国立昭島線が都市計画決定されています。道路自体は概成しています。
現在の都市計画では、JR南武線を高架によりオーバーパスにより立体交差する計画ですが、このオーバーパスの計画を廃止するとともに、JR南武線重複箇所の幅員が13.5mの計画のものを前後に合わせて22mとし、あわせて車線数を2と決定する都市計画変更を行う予定です。
なお、踏切付近は踏切西側の一部未取得箇所と踏切部分を除き幅員22mが確保されています。踏切部分は幅員は12.5mと狭いですが、高架化後は解消されるものとも割れます。
西国立駅に近い関係で、踏切が早く閉まることが多く、また、前後で信号が近接している関係で、時間帯によっては渋滞が発生していることが多いです。
上野原第一踏切
34k189mにある上野原第一踏切です。西国立駅の川崎側近くにあります。
自動車や自動二輪車の通行は規制されています。
西国立駅の改札口は駅の東側にしかありませんが、駅の西側には立川病院や東京都立川合同庁舎などがあり、歩行者利用数は多い踏切です。かつては立川市役所もありました。
緊急に対策の検討が必要な踏切(カルテ踏切)に指定されています。
西国立駅~立川駅間
西国立駅
駅舎は駅の東側にあります。
対面式ホーム2面2線で、立川方面ホームとは跨線橋で結ばれています。
駅前は狭く、交通広場は整備されていません。
駅の西側に保線基地が設置されています。
かつて駅に隣接して立川機関区が設置されていました。現在はマンションなどとなっています。(西国立駅にあった立川機関区の痕跡を探る)
駅の西側には、新しく地積4000㎡程度の交通広場と、それにアクセスする都市計画道路を整備する予定で、立川市では新たに立川7・4・5号西国立駅線として都市計画決定する予定です。
かつてはこの一帯に立川病院とその職員寮がありましたが、立川病院建て替えに伴い解体され、更地の状態が続いています。
上野原第二踏切
34k459mにある上野原第二踏切です。
羽衣踏切
34k578mにある羽衣踏切です。都道145号立川国分寺線と交差します。
緊急輸送道路(三次路線)に指定されています。
現況道路の幅員は12m程度です。この道路に沿って立川3・4・8号立川国立線が都市計画決定されており、現在の都市計画ではJR南武線と立体交差する計画となっています。また、立体交差部分の計画幅員は20.5mで、前後の16mに比べて広くなっていますが、連続立体交差化に合わせて計画幅員16mに狭める都市計画変更を行う予定です。これに伴い、道路端部からの距離で決定されている用途地域に変更がある可能性があります。
錦町踏切
34k724mにある錦町踏切です。今回の連続立体交差事業で一番立川側にある踏切道です。
この踏切は、高架スロープの関係上、通行できる車両の高さに制限がかかる計画です。
羽衣踏切と錦町踏切の間には、戦前は東立川駅がありました。現在でもその名残と思われるやや広いスペースが残っていますが、高架化後は痕跡がわからなくなるのでしょうね。
高架は錦町踏切から立川方面で地上に降りる計画です。
撮影日:2023年8月6日 記載内容は執筆日または撮影時のものです。変更があった場合も追記できていない場合があります。
コメント
きぬた歯科を画角に入れたかったカットがあるように拝見します。笑
暑い中お疲れ様です。
きぬたは意識しました。
暑いので午前5時台に撮影したのですが、やっぱり暑かったです。
暑い中ありがとうございました。これから無くなってしまう風景の記録ですね。切なさもありつつ見入ってしまいました。更に、高架計画に意味があるという事に納得しました。永久保存したい記事です。