多摩ニュータウン入居開始から半世紀 住宅団地の建て替え進む

稲城市多摩市八王子市町田市にまたがる多摩ニュータウンは1971年3月26日に諏訪・永山地区で入居が始まりました。

今年は2021年。今年で入居開始から半世紀になります。

そうした現在、多摩ニュータウンの各所で「再生」の動きが進んでいます。多摩ニュータウンの「建設」については様々な資料が残る一方で、「再生」についてもしっかりと記録しておくべきなのではなかろうか……と思い、このブログでも少しずつ記録していくことにしました。既に再生が完了している箇所もありますが、今後も記録を続けていこうと思います。

今回は住宅団地の建て替えについて、現在の状況をまとめます。

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はじめに

初回なので多摩ニュータウンについてざっくりと書いておきます。次回以降は省略するかもしれません。

多摩ニュータウンとは

多摩ニュータウンの区域は上記に示した範囲です。稲城市、多摩市、八王子市、町田市のそれぞれ一部で、総面積2,853haです。ときどき日野市程久保・南平付近や、多摩市の桜ヶ丘付近、川崎市多摩区付近、八王子市絹ヶ丘付近、稲城市の南山付近などを多摩ニュータウンと勘違いしている人がいますが、全く違います。

1960年頃の東京は深刻な住宅難が発生し都市が拡大しており、無秩序な開発が進行していました。そうした中、乱開発を防止し、良好な住宅を大量に供給することを目的とし、1965年に都市計画決定され事業が始まりました。

事業は新住宅市街地開発事業土地区画整理事業の2つの手法を用いて行われました。
新住宅市街地開発事業は土地を全面買収して行う手法です。一方、既存集落の存在していた谷部分について新住宅市街地開発事業で行うことは難しかったことから、一部は土地区画整理事業で整備が行われました。

施行者は東京都、UR都市機構(旧:日本住宅公団→住宅・都市整備公団→都市基盤整備公団)、東京都住宅供給公社、土地区画整理組合です。

新住宅市街地開発事業による整備地区は近隣住区論に基づき設計されており、多摩ニュータウンは21住区で構成されています。

新住宅市街地開発事業は東京都施行が2004年に、UR都市機構施行が2006年で終了しています。

多摩センター

入居開始年

多摩ニュータウンの入居開始年(住区ごと)

最初の入居は1971年に諏訪・永山地区で始まりました。その後西へ整備が進み、稲城にもどって1999年に若葉台地区で入居が始まったのが最後となります。(19住区は特殊なので例外)

若葉台地区の高齢化率は13.1%なのに対し、諏訪地区では28.7%、永山地区では34.2%、和田では52.5%など、初期入居地区では高齢化が進んでいます。※東京都全体の高齢化率は23.3%、日本全体は28.4%(東京都HP、令和2年版高齢社会白書に基づく。都全体は2020年9月15日現在、日本全体は2019年10月1日現在、ニュータウン内はいつ時点か不明。)(和田地区などは都営住宅などの所得制限のある住居が多く、高くなる傾向はあるものと思われる)

再生に向けた動き

多摩ニュータウンの再生に向けては、東京都、多摩市、八王子市などが計画の策定を行っています。

東京都では2012年6月に『多摩ニュータウン等大規模住宅団地再生ガイドライン』を策定し、再生の方向性や取り組み方法を示しました。
また、2018年2月には『多摩ニュータウン地域再生ガイドライン』を策定し、2040年代の将来像を示すとともに、その実現に向けたまちづくりの方針や東京都の基本的な考え方などを取りまとめています。
そのほか、東京都の上位計画等でも多摩ニュータウンの再生が位置付けられています。

多摩市では多摩市、学識経験者、東京都、URなどで構成する「多摩ニュータウン再生検討会議」を設置し、同会議が2015年に『多摩ニュータウンの再生方針』を市に提言し、その後市がパブリックコメントなどを実施し2016年3月に『多摩ニュータウン再生方針』を策定しました。

その後は地区別のまちづくり計画として、諏訪・永山地区を対象とした『多摩ニュータウン リ・デザイン 諏訪・永山まちづくり計画』を2018年2月に策定しました。他の地区についても今後策定する方針です。

八王子市では多摩ニュータウンの持続可能なまちづくりにむけて、2019年3月に『多摩ニュータウンまちづくり方針』を策定し、将来像や方針、取組みなどを示しています。

住宅再生に向けた動き

諏訪・永山地区

諏訪二丁目団地の建て替え

諏訪・永山地区では、諏訪二丁目団地の建て替えを皮切りに建て替えが進み始めています。

ブリリア多摩ニュータウン

諏訪二丁目住宅は日本住宅公団が分譲し1971年に入居を開始した全23棟640戸の分譲団地でした。

2010年に建て替えが決議され、マンション建替法にもとづくマンション建替事業によって建て替えが行われました。東京建物株式会社が参加組合員として参加しています。

2013年10月に竣工し、建て替え後は7棟の1,249 戸となり、「ブリリア多摩ニュータウン」と名前を変えています。

建て替え前の団地と同様に敷地にはゲートがなく開放型の住宅となっているほか、機械式駐車場を設置しないなど、旧来の公団住宅のいいところを残した住宅となっているように感じます。

都営住宅の建て替え

諏訪・永山地区の都営住宅でも建て替えが進行しています。

都営多摩ニュータウン永山三丁目団地

都営多摩ニュータウン諏訪団地の建て替えとして、西永山中学校跡地(1997年閉校)の一部に都営多摩ニュータウン永山三丁目団地が建設されました。

都営多摩ニュータウン諏訪団地の一部がこちらに移転しています。

都営多摩ニュータウン諏訪団地4-1-1~3跡地
都営多摩ニュータウン諏訪団地5-2-6
都営多摩ニュータウン諏訪団地4-2-3

移転となった住棟のうち、4-1-1~35-2-6は既に解体され更地になっているほか、4-2-3についても退去が完了しているようです。4-2-3については諏訪東近隣センターの一部として一階部分が店舗となっていて、1971年当初は8店舗(うち生活再建者店舗が6店舗)となっていましたが、末期にはYショップ等が営業するにとどまっていました。

都営多摩ニュータウン諏訪五丁目団地(仮称)

同様に、都営多摩ニュータウン諏訪団地の建て替えの一環として、中諏訪小学校跡地(1994年閉校)都営多摩ニュータウン諏訪五丁目団地(仮称)が建設中です。

既に足場も取り外されています。

都の資料によると、都営多摩ニュータウン諏訪団地4-1-4~7が移転する予定です。

都営多摩ニュータウン諏訪団地では、上記の小中学校跡地を種地として連鎖的に建て替えを行う方針のようです。

UR賃貸住宅の建て替え

UR賃貸住宅の建て替えも進行中です。

2020年3月には、令和元年度団地再生事業等着手予定団地(第4次)として、多摩ニュータウン
諏訪団地のうち120戸の着手が公表されています。

UR多摩ニュータウン諏訪団地 2-1-3跡地

2020年にはUR多摩ニュータウン諏訪団地北部のポイント住棟2棟(2-1-22-1-3)が解体され更地になりました。

UR多摩ニュータウン永山団地3-3-5跡地
UR多摩ニュータウン永山団地3-3-10跡地
諏訪近隣センター店舗5-6-1跡地

このほか、UR多摩ニュータウン永山団地のうち3-3-53-3-10住棟が解体され更地になっているほか、諏訪近隣センター内の店舗(5-6-1)も更地になっています。5-6-1にはかつて「地産ストアー」というスーパーが入居していました。

このほか、市が保有する東永山小学校跡地(1996年閉校)と、URが保有する旧多摩ニュータウン事業本部用地を2021年度にも交換する予定です。

現在の旧多摩ニュータウン事業本部用地は日本医科大学多摩永山病院の建替え移転先となる計画です。

現在のところURの新築建物は建設されていませんし、東永山小学校跡地の利用も気になるところです。

尾根幹沿いの土地利用転換

UR多摩ニュータウン永山団地と南多摩尾根幹線道路(歩行者専用部分)

南多摩尾根幹線道路に面する土地にも現在は住宅団地が立ち並んでいますが、土地利用の転換に向けて検討が進められているほか、南多摩尾根幹線道路の4車線化工事も始まっています。

17住区・18住区

1972年に入居開始した、17住区(和田・東寺方・愛宕・鹿島地区)18住区(松が谷地区)の住宅団地の再生も進行しています。

17住区のうち、都営多摩ニュータウン東寺方団地都営多摩ニュータウン和田団地の一部都営多摩ニュータウン愛宕団地の一部を建て替えるため、都営多摩ニュータウン中沢一丁目団地(仮称)都営多摩ニュータウン愛宕四丁目団地(仮称)の建設が進められています。

都営多摩ニュータウン中沢一丁目団地(仮称)

多摩ニュータウン通りの松が谷トンネルの東側の都有地には、都営多摩ニュータウン中沢一丁目団地(仮称)の建設が進み、現在は足場が外されています。

都営多摩ニュータウン愛宕四丁目団地(仮称)
都営多摩ニュータウン愛宕四丁目団地(仮称)

また、西愛宕小学校跡地(2016年閉校)には都営多摩ニュータウン愛宕四丁目団地(仮称)の建設が進められています。

既に一部住棟の足場が外されています。

この地区の都営住宅ではこれらを種地として順次建て替えを進める方向のようです。

都営多摩ニュータウン愛宕団地(左から1-3-2、1-3-1)
都営多摩ニュータウン和田団地(左から3-1-7~9)
都営多摩ニュータウン東寺方団地

都の資料によると今回の建設により移転対象となる団地は上記です。

都営多摩ニュータウン和田団地の一部と東寺方団地の建て替えは既に基本設計が発注されています。

撮影日:2020年12月30日、2021年1月6日ほか 記載内容は執筆日または撮影時のものです。変更があった場合も追記できていない場合があります。

コメント

  1. 麻生人 より:

    こういった動きがあるのは知っていましたが、尾根幹やNT通りとそれらを結ぶ街道沿いしか通らないもので、興味深く拝見いたしました。
    確かに若葉台は後期ですね。若い頃、駅前の土台だけの道を車でたまに通りました。
    にしても、半世紀経って「ニュータウン」というネーミングは…😅

    • yunomi-chawan yunomi-chawan より:

      多摩市内の多摩ニュータウンの幹線道路は団地より少し低い場所を通っていることもあって、団地内のことはなかなか見えないんですよね。道路と違って建築は一気に工事が始まって一気に終わってしまうので、いつの間にか工事が終わっていて少し驚きました。

      若葉台は2019年にまちびらき20周年のフラッグがぶら下がっていましたね。ユニディと三和しかなかった時代がつい最近のように感じてしまいます。

      個人的にはニュータウンはオールドタウンと言われるよりか、いつまでもニューなままでいてほしいです。

  2. 余熱亭 より:

    大変素晴らしい記録だと思います。ほかの記事含めいつも楽しみにしています。無理のないペースで続けてくださると嬉しいです。

  3. 8号棟の元住民より より:

    記事を読んで懐かしくなり、永山三丁目に行ってきましたけど、写真と文章に取り違えが有るのかな。
    少し残念

    • yunomi-chawan yunomi-chawan より:

      永山団地3-3-5とすべきところを3-3-4となっていた箇所について訂正しました。
      ほかに間違いがある場合は教えてください。よろしくお願いいたします。

  4. 勝浦誉行 より:

    いつも楽しく読ませて頂いています。
    多摩センターに引っ越してはや13年、その間、高齢化社会の象徴とかオールドタウンといった多摩ニュータウンに対するネガティブな評価に,偏見に満ちた無知からくる思い込みだと強い抵抗を感じておりました。
    現役時代,仕事で米国カリフォルニア州に6年弱住んでました。場所はロスの南,アナハイムに近いアーバイン。日本人がデザインした、計画的に作られたニュータウンで、人口池と緑豊かな環境を大変気に入っておりました。将来こんな街に住みたいと思いつつ、これほど素晴らしい環境と景観を備えた街を日本で望むのは無理だろうと思ってました。
    帰国後、終の住処を探して多摩センターに降り立った時は衝撃的でした。「日本にもアーバインがあった!」と,家族ともども一目惚れし即決でした。
    これからも多摩ニュータウンの更なる発展と素晴らしい自然環境保全を願っています。
    俺の居場所さんにお願いがあります。これから精力的に追って欲しい社会インフラ整備の一つに「電線地中化」があります。電柱と電線のない景観は、街そのもののグレートアップと、大震災の防災減災に必ず寄与します。よろしくお願い致します。

    • yunomi-chawan yunomi-chawan より:

      以前も同様のコメントをしていただいていたかと思います。その後色々と調べを進めていますが、電線類の地中化と一言で言っても、電線共同溝方式なのか、自治体管路方式なのか、単独地中化方式なのか・・・色々と法的にも手法的にも種類があって、ぱっと見だけでは判断が付かず、そのデータ等調べるのに時間を要しています。

      また、地域ごとの電線類の地中化状況と、現在の工事状況をまとめるだけならすぐにできると思いますが、多摩ニュータウンの電線類地中化を体系的にまとめようとすると、日本の電線類地中化の歴史をまとめるくらいまで話が広がることになるので、どのようにストーリーを持っていくべきか悩ましいところでもあります。

      まだしばらくお待ちください。

  5. たつひろ より:

    和田団地の建替がいつからでしょうか。

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