なかなか県境を越えられない 町田市・川崎市市境の行き止まり

境目」はいろいろと障壁となることが多いですが、道路だって同じのようです。

撮り溜めた写真を少しずつ消費する「行き止まりシリーズ」、今回は第2回目です。

1つめ

今回取り上げるのは町田市川崎市の道路です。

そのうち1つ目が町田市側「町田3・4・30号大蔵広袴線」、川崎市側「川崎3・4・23号栗木線」です。鶴川市民センター付近から川崎市を抜けて稲城市の鶴川街道まで、ひと続きで決定されています。

しかし、町田市川崎市の境目では「行き止まり」が発生しています。

町田市広袴。2車線の広い道路が、町田市川崎市の境目の手前で山にぶつかって終了しています。端には左に抜ける道があるので、厳密には行き止まりではありませんが、この先まっすぐと抜けることができません。

町田市側は土地区画整理事業によって整備

この付近は都市基盤整備公団による鶴川第二土地区画整理事業が行われた区域です。大蔵広袴線の計画があったため、土地区画整理事業の際に、道路も事業範囲際(=市境付近)まで建設されました。土地区画整理事業自体は2003年に換地処分され、それ以降このままとなっています。

川崎市側も土地区画整理事業が行われるも、市境付近まで達せず

川崎市側も小田急多摩線の開通に合わせて、組合施行の土地区画整理事業が相次いで行われました。1982年度まで行われた栗木第一土地区画整理事業では栗木線の大部分が建設されましたが、市境付近は開発の波から逃れ、現在でもなお市街化調整区域となっています。

なお、川崎市側の整備済みの南端は、後に行われた道路の付け替え(道路事業)により、行き止まりらしさがなくなっています。

課題は多いか

この付近は市境付近を境に小さな山になっていて、周辺では「峠」などと呼ばれることもあります。この県境を境に生活圏が異なっています。

町田市側は栗平駅や黒川駅の方が直線距離では近い地域も、バスが開通し駅まで勾配の少ない鶴川駅を利用する傾向が非常に高くなっています。

この道路ができれば、快速急行も停車する栗平駅へのアクセスは格段に上がる一方で、「峠」であることから建設には莫大な費用が掛かることが目に見えていて、双方「市道」としての整備にはハードルが高そうです。町田市議会では話出ることあるんですけどね、川崎市側との温度差も感じます。

東京都の道路計画(東京における都市計画道路の整備方針)にも、川崎市の道路計画(道路整備プログラム)にも現時点で整備は位置づけられていません。

2つめ

2つ目は、先ほどの道路より少し南にある道路です。

町田市側は町田3・4・21号能ヶ谷井の花線、川崎市側は川崎3・4・21号片平線として決定されています。

こちらも同様、町田市側は1968年換地の鶴川土地区画整理事業(日本住宅公団施行)や、2002年換地の能ヶ谷土地区画整理事業(組合施行)、2004年換地の能ヶ谷東部土地区画整理事業(組合施行)によって整備され、市内の整備率はほぼ100%です。

このうち能ヶ谷東部土地区画整理事業は一番川崎市に近い土地区画整理事業で、「千都の杜」として野村不動産が販売しました。ちょっとした高級住宅街で、ドラマなどの撮影によく使われています。

町田市側は完全な行き止まりとなってます。

このほか、住宅内の区画道路が川崎市側道路と接しているものの、いずれにも車止めがあり、車が町田市川崎市を行き来できないという徹底ぶりです。

川崎市側も2007年終了の片平土地区画整理事業(組合施行)が行われ、20mほど整備されています。

土地区画整理事業の範囲が右側の川までだったこともあって、左の道路から川までのわずかな距離だけ整備されているという状況です。

置きガードレールがあり、車両は通れなくなっています。

丁寧に縁石まで整備されていました。この部分だけ見れば、線を引けば完全に道路です。

この道路は、上の道路と同様に起伏のある場所に計画されています。川崎市側の未整備箇所は、半分ほど市街化調整区域、半分ほど市街化区域(第一種低層住居専用地域)となっています。市街化区域の場所は無秩序な開発が行われています。

正直なところ、この道路の期待値はそれほど高いようには見えず、かなりハードルの高いものでしょう。いずれ存在自体議論を始めてもおかしくないのかな……と思わなくもないです。

これらの道路がないことで、古くからあるすれ違い不可能な細い道に車が入り込んでいます。

一方で、東京都側・川崎市側双方で優先整備路線になっている鶴川街道世田谷町田線(津久井道)のほか、真光寺長津田線岡上駐在所付近の拡幅も進めてほしいな。県境は何かと支障になりますね。

ちょっと意見多めの記事になっちゃったな。

撮影日:2016年3月17日、2017年12月26日 記載内容は執筆日または撮影時のものです。変更があった場合も追記できていない場合があります。

コメント

  1. ファレノ より:

    いつも楽しく拝見させていただいております。
    先日 上麻生連光寺線から、2021.6.25の記事「リニア中央新幹線[片平/能ヶ谷非常口]
    工事用道路」へ曲がる道を少し広げるような工事をしているように見えました。
    (トラックなどが通りやすくするため?)
    この道路にのっかって「1つめ」と違う向きでつながるといいな、というのは
    現実的な期待でしょうか?

    • yunomi-chawan yunomi-chawan より:

      片平川と県道上麻生連光寺線の間の区間ですね。この前舗装工事をしているのを見ました。
      リニア中央新幹線の整備に伴う、JRの自費工事による市道拡幅工事で、工事用車両と歩行者の安全を確保するためのものと聞いています。(当初は拡幅しないような説明があったような気がしますが)
      残念ながら、町田市方面には繋がりません。

  2. スゴイ より:

    スゴイ

  3. Butz-k より:

    栗平駅周辺に住んでいるものです。
    いつも利用する道でしたので、大変興味深く読ませて頂きました。

    数年前に栗木線区境が開通したので、「3・4・23号栗木線」が町田まで抜けると非常に便利な道路になると思います。
    ただ、記事を書かれたのが5年前ですが、現状も変わっておりませんね…

    「3・4・9号尻手黒川線」のトンネルもまだまだかかりそうですが、このトンネルが開通したら交通量が増えて、尚更 町田方面に抜ける横道の必要性が高まると思うので…
    川崎市側に推進派の議員さんが出て来てくれれば嬉しいです。

    • yunomi-chawan yunomi-chawan より:

      町田市側の市議には開通を唱える市議がいますが、川崎市にはやる気がないのでたぶん整備はされないと思います。
      尻手黒川線のトンネルはトンネル本体の入札が現在行われており、大きな工事なので工事そのものに時間がかかりますが、意外と早く開通すると思います。

  4. yoshi3london より:

    元鶴川の住民です。この一つ目は町田市側の終わり方が特徴的で、トンネルでも作るのかなと思い調べたら都市計画道路だったとわかりました。
    完成はずっと先になるのでしょうが、尻手黒川線川崎3・4・9はだいぶ変わりましたし、町田3・4・23も真光寺から鶴川駅方面に抜けるまでずいぶん待ちました。少しづつ変わっていくのでしょうね

    • yunomi-chawan yunomi-chawan より:

      基本的にこの付近の都市計画道路は、土地区画整理事業などの面的開発で整備され、道路事業や街路事業として整備した区間はわずかです。
      人口減少する中で、これから大規模な土地区画整理事業をすることは考えにくく、また、行政も線引きを変更することに消極的なため、道路を整備するとなると道路事業や街路事業で行われることになるかと思います。
      真光寺~黒川に抜ける都市計画道路は優先整備路線になっていますが、その他の路線はよっぽど整備機運が高まらない限りなかなか難しい気がします。

  5. gohan-chawan より:

    2つめにある「千都の杜」の開発が始まる少し前に付近に居住し始め、開発が始まると藤の木交差点から見上げた丘陵地帯をテレビでしか観たことがなかったダム工事で使われている黄色い巨大なオフロードダンプカーが幾台かが疾走していたのを遠目で見て感動したのを覚えてます。

    津久井道の拡幅と津久井道と尻手黒川線を繋ぐトンネル工事が完了すれば、津久井道下り線の柿生交差点付近での渋滞はかなり緩和するのでしょうね。
    上り線の渋滞ネックのひとつである上麻生交差点で暫定的?に進めているの右折ポケットの設置も期待してます。

    しかし、鶴川駅東側交差点と上麻生交差点の間の拡幅が?である現状で、尻手黒川線に入るには抜け道がない津久井道を経由せざるをなく、渋滞緩和は見込めないかと。
    殊に小田急線が事故などでこの付近の踏切が閉まったままであるとそれは酷い渋滞を引き起こしています。

    1つめ、2つめとも繋がれば津久井道渋滞緩和に繋がると思いますが、2つめは地元自治会が通過車両増加による騒音と事故を嫌い阻止しているとも聴いてます。

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