日本初のプレストレストコンクリート橋(PC橋)を見に、福井県と石川県に行ってきました。
土木を勉強した方なら常識だと思いますが、PC橋とは予め応力を加えたコンクリートを使用した橋の事です。といってもあれなので・・・
コンクリートは圧縮力には強い一方、引張力には弱いという性質があります。
このため、コンクリートのみの桁を作ったとして、上に荷重が乗っかると、桁の下側に引張力が生じ壊れてしまいます。
この引張力に抵抗するために鉄筋を加えたものが鉄筋コンクリートといい、こうして造られた橋を鉄筋コンクリート橋(RC橋)という訳です。(鉄筋は引張力に強い)
そうはいっても、RC橋にも限界があり、さらに強い橋を造るために考えられたのがプレストレストコンクリート橋(PC橋)で、コンクリートにPC鋼材であらかじめ圧縮力を加えておくことでひび割れを制御でき、橋の長大化にも貢献できるという訳です。
近年造られるコンクリート橋はほとんどがPC橋なので、現在は特に珍しい技術ではありません。
長生橋
そんなPC橋でも、日本初の橋が石川県にあるというので行ってきました。
石川県七尾市。JR七尾線の七尾駅から車で10分ほど行った場所にある希望の丘公園内にその橋はあります。
長生橋といい、これが日本で最初のプレストレストコンクリート橋(PC橋)です。当時の東日本重工業株式会社七尾造船所、現在の株式会社ピーエス三菱が施工し、1951年12月に完成しました。(1952年とする文献もあり)
現在のこの橋は、かつては七尾市街の御祓川に架かっていましたが、河川改修により架け替えられ、この公園に移設されたとのことです。
橋の幅などは変わっており、現在は公園内の歩道橋となっています。
橋の橋脚が少し沈んでいたり、高欄にひびが入っていたり、照明が割れていたりと、正直あまり保存状態はよくない気もしましたが、このように残されているのはいいことだなと思いました。
もともと長生橋があったのは七尾駅から海方向に500mほど行った場所で、現在は架け替えられた新しい長生橋が架かっています。
橋の横には案内板もあり、今でも愛されているようです。
十郷橋
さて、次は「十郷橋」です。(訪問順は十郷橋→長生橋)
福井県坂井市の丸岡駅から徒歩3分程度の場所にあります。丸岡駅は福井駅から3駅、芦原温泉駅から1駅の小さな駅です。
この橋は、プレストレストコンクリート橋(PC橋)のうち、ポストテンション方式として日本初の橋です。
PC橋にはプレテンション方式とポストテンション方式があります。
コンクリートを打設する前にPC鋼材を緊張させるのがプレテンション方式で、コンクリートを打設した後にPC鋼材を緊張させるのがポストテンション方式です。
さきほどの七尾市の長生橋はプレテンション方式でした。
橋は当時の敦賀ピー・エス・コンクリート株式会社、現在の株式会社日本ピーエスが施工し、1953年に完成しました。現在でも道路橋として供用されています。
そして、土木学会選奨土木遺産にも選定されました。
橋が跨ぐ十郷用水は、現在はパイプライン化(暗渠化)されていて、地上からその姿は見えなくなっていますが、十郷橋の区間はほんの一部だけ水が地表を流れるように残されているほか、写真のように表面も化粧がされていて、この橋も地域から愛されているのがよくわかりました。
高欄などは取り換えられているようですが、橋は現在でも健全なようです。
日本初のRC橋(再掲)
ちなみに、日本初のRC橋は、京都府の琵琶湖疏水に架かる「第11号橋」で、補剛がされているものの、こちらも現役です。
撮影日:2022年10月10日(一部除く) 記載内容は執筆日または撮影時のものです。変更があった場合も追記できていない場合があります。
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