相模原市緑区で事業が予定されている相模原都市計画事業橋本駅南口地区土地区画整理事業について、土地区画整理法第71条の3第4項の規定に基づき、施行規程及び事業計画(案)の縦覧が行われていたので縦覧してきました。
リニア中央新幹線の神奈川県駅(仮称)の設置が予定されている橋本駅南側で計画されている土地区画整理事業で、独立行政法人都市再生機構が施行する予定です。
※この記事は縦覧されていた資料を基に記載しています。現時点では認可されていません。事業認可までに変更される可能性があります(ほぼないと思いますが)。
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事業概要
相模原都市計画土地区画整理事業 橋本駅南口地区土地区画整理事業は、橋本駅南側で計画されている土地区画整理事業です。2023年3月7日に都市計画決定されました。
現在、事業着手にむけて準備が行われています。
施行予定者 | 独立行政法人都市再生機構 |
施行地区 | 神奈川県相模原市緑区橋本一丁目、橋本二丁目及び大山町の各一部 |
面積 | 約13.7ha |
施行規程・事業計画縦覧公告(土地区画整理法第71条の3第4項) | 2025年2月4日 縦覧期間(2月5日から2週間) |
事業認可 | 未 |
事業施行期間 | 認可の日~2036年3月31日(清算期間を含む) |
公共減歩率 | 33.4% |
公共保留地合算減歩率 | 37.3% |
2025年2月9日時点 |
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写真等
縦覧
土地区画整理法に基づく縦覧は、2月4日付の官報で告示されていました。
土地区画整理法第71条の2~6までは、独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)等が施行する土地区画整理事業について定めており、縦覧は同法に基づき必ず行うものです。
なお、縦覧は2月5日~18日までの土日祝を含む2週間行われ、既に終了しています。
また、同法第71条の3第5項の規定に基づき、縦覧期間満了の日の翌日から起算して二週間を経過する日まで、利害関係者は都道府県知事に意見書を提出することができます。
私は利害関係者でも何でもないのですが、相模原市やURのウェブサイトでこの土地区画整理事業の設計図等を全く見たことがなかったので、その調査のため縦覧に行きました。相模原市のウェブサイトではまちづくりの方針などのざっくりとした絵は出てくるんですが、やたら情報が少ないんですよね。
縦覧図書は写真撮影可とのことでしたが、SNS等へのUPは遠慮くださいとのことだったので掲載は控えます。
この「縦覧」ですが、土地区画整理事業に限らず、特にまちづくり系の法律では多く定められている行政手続きの1つです。資料を自由に見れる状態にしておくことをいいます。
ただ、個人的に不満なのですが、各事業者によって書き写し、写真撮影、録音、トレースの可否が様々であることです。事業者により恣意的に運用されかねないため、法令で可否をしっかり定義しておくべきだと思います。もちろん全部可でね。
縦覧は情報公開制度などが無い時代からある行政手続きですが、現在は公文書は原則公開の時代ですから、何ら隠す必要も拒否する必要もないはずです。
それとこれだけネットが普及しているのですから、インターネットでの公開を通常の方法とすべきだと思います。事業者によっては、役所等での従来の縦覧と並行して、「情報提供」としてインターネットに掲載しているところもあります。
設計の概要
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縦覧図書によると、施行予定面積は約13.7haで、施行予定者は独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)、施行地区は神奈川県相模原市緑区橋本一丁目、橋本二丁目及び大山町の各一部となっています。
施行範囲は、2023年3月7日に都市計画決定されています。
事業計画(案)記載の設計の方針には、以下のように記載されていました。
土地利用については、商業・業務用地を中心に多機能型複合施設等を誘致し、首都圏南西部における広域交流拠点としての質の高いまちづくりの実現を図る。
道路については、東西南北に都市計画道路として4路線を骨格道路として配置する。具体的には東西の交通動線となる橋本駅南口駅前通り線及び橋本駅東通り線、南北の交通動線となる橋本西通り線及び橋本駅氷川線を配置する。また、将来占用予定のリニア中央新幹線の施設配置計画との整合を図る計画とし、立体横断施設の整備等を行うと共に、西端においては国道16号の交差点の改良を行う。また、本地区の北側に計画されている京王線橋本駅の移設等に伴い交通広場を配置し、交通ターミナルの機能強化及びにぎわいのある駅前空間の形成を行う。加えて、既設道路の改修を基本とした幅員6.0m以上の区画道路等、地区内の歩行動線や災害時の緊急避難路となる幅員6.0m以上の特殊道路(歩行者専用道路)を適宜配置する。
公園については、地区東端に配置し、橋本駅東通り線及び橋本駅南口駅前通り線のオープンスペースと合わせて賑わい・滞在空間を創出する。
下水道については、既存の公共下水道と整合を図った上で整備し、既存管渠に接続して排水する。
施行地内には、都市計画道路を整備するとともに、おおむね現道に沿った区画道路も整備される計画です。なお、現在の南口広場は廃止され、約1.3haの交通広場が整備される予定です。
また、施行地区東側に、約1,049m2の公園が設置される計画です。これは施行地区の0.8%にあたります。土地区画整理法施行規則第9条第6項では、施行地区の面積の3%以上の面積の公園を設置するよう定めていますが、同規則但し書きを適用しているものとみられます。また、事業計画(案)では具体的な記載がなかったものの、地区を東西に貫く代表幅員49mの都市計画道路には、オープンスペースを設ける計画となっています。
事業費は約293.2億円を見込み、歳入は国費約80.9億円、市費185.3億円、ほか保留地処分金となっています。支出では、工事費約264.7億円となっています。
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そもそも土地区画整理事業とは、地権者などから少しずつ土地を提供してもらい(減歩)、その土地を道路や公園などの公共施設にあて公共施設を整備し、土地を整理する事業です。また、土地の一部を保留地として売却することで、事業費の一部に充てることがあります。
もともとの土地の面積から減ることになりますが、この減る率を減歩率といい、とりわけ道路や公園等の用地として減る分を公共減歩、保留地となる分を保留地減歩といいます。
事業計画(案)によると、この事業での公共減歩率は33.4%、公共保留地合算減歩率は37.3%となる計画です。
なお、土地区画整理事業前の従前の土地の地権者は、JR東海のほかに旧県立相原高校校地であったことから神奈川県が多くを占めています。これらの土地は「公共減歩により土地を提供していただく予定」(相模原市2024年9月定例会答弁)としています。ただ、土地区画整理事業については県費がゼロで、神奈川県にとっては美味しい事業感があります。
現在の様子
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土地区画整理事業の予定地のほぼすべてでは、リニア中央新幹線の神奈川県駅(仮称)の建設が進められています。幅員49mの広幅員都市計画道路の直下に駅ができる予定で、現在は前後トンネルの構築などが進められています。
また、掘削で発生した土砂の一部は、旧相原高校校地に積み上げられており、埋め戻しの際に再使用する予定です。以前現場見学会に参加した際のゼネコン社員の話では、「地盤がよく、土質もいい。こんなにいいところ私は初めて。」みたいなこと言っていましたね。駅部分を途中までオープンで開削しているのもその証拠です。
現在の橋本駅は、JR横浜線及びJR相模線の橋本駅の南側に擦りつくように京王相模原線の橋本駅もあります。京王の駅は少し離れていて、京王の駅を移設する構想があります。
『相模原市リニア駅周辺まちづくりガイドライン』等によると、現在の北口からJR横浜線・相模線橋本駅、京王橋本駅、リニア駅と、南北の交通・にぎわい軸となる動線を造りたい考えのようです。
駅の移設については、設計の方針に少しだけ言及がありましたが、現時点で具体的に事業が始まっているわけではないためか、設計図等には表れていませんでした。駅移設ラインに沿って不思議な線が引かれていたので、考慮した設計にはなっているようです。
また、現在の南口付近に、図面上は行き止まりの区画道路が計画されています。隣接土地に何らかの計画を持った道路かなと想像しています。
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現在の橋本駅からリニア駅までは平面で約200mの距離があります。この間には交通広場などが計画されています。
『相模原市リニア駅周辺まちづくりガイドライン』には、交通広場のほかに、JR東・京王改札階レベル(2階)を繋げた線が引いてあります。
また、設計の方針に「立体横断施設の整備等を行う」とあるように、デッキなのか地下通路なのか、何か整備するようです。
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縦覧図書の「市街化予想図」には鉄塔用地が書かれており、工事費にも鉄塔移設費が計上されていますさすがに一部送電線は地下化するんですよね?
東西を貫く広い都市計画道路の歩道部には「オープンスペース」と色付けされた部分が記載がありました。これが具体的にどんなものを目指しているのか、注目していきたいと思います。
なお、土地区画整理事業の範囲外となる都市計画道路2路線(関連外郭含む)は、2025年1月24日に事業認可されました。
リニアの工事が進まないと着手できない箇所も多いですが、これから大きく変化していきそうです。
撮影日:2025年2月7日 記載内容は執筆日または撮影時のものです。変更があった場合も追記できていない場合があります。
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