南武線(立川駅付近~矢川駅付近)連続立体化の機運高まるか?

このほど、JR南武線立川駅付近~矢川駅付近で、鉄道の連続立体交差化の気運が高まりつつあるようです。

注意
この記事は、投稿時点(2018年4月)の情報をもとに記述したものです。
2023年8月に、谷保駅~立川駅間の連続立体交差事業に係る都市計画関係の説明会が開かれています。2018年時点の情報よりも、施工予定延長などが伸び、解消される踏切数なども変更されています。

参考:南武線で使われるE233系電車

連続立体交差事業とは

連続立体交差事業とは、市街地において道路と交差している鉄道を一定区間連続して高架化又は地下化することで立体化を行い、多数の踏切の除却や新設交差道路との立体交差を一挙に実現する都市計画事業のこと(平成16年 踏切対策基本方針)です。

国が定めた「都市における道路と鉄道との連続立体交差化に関する要綱」には詳しい定義がされていますが、参考にリンクだけ貼っておきます。

この事業は「道路整備」の一環として行われるもので、事業費は事業者である都市側のほかに、鉄道側も一部を負担することとなっています。また、増線(複々線化等)などの鉄道施設の増強に関わる部分の費用は鉄道側が全額負担することになっています。

参考:地下化による連続立体交差事業を行った京王線調布駅付近

都内では、1961年(昭和36年)に東急東横線学芸大学駅~自由が丘駅間の約0.9kmが立体化して以降、多くの路線で連続立体化が行われています。

これとは別に、鉄道と交差する道路を立体化、あるいは鉄道を短区間で立体化する「単独立体交差事業」もあります。(前者の例:横浜線と北野街道が交差する打越土入立体、後者の例:西武拝島線と府中街道の交差)

また、近年では踏切の新設は原則認められないため、新しくできた鉄道は立体交差しています。

2004年の踏切対策基本方針

東京都が2004年(平成16年)に策定した「踏切対策基本方針」があります。

これでは「重点踏切」や「鉄道立体化の検討対象区間」、「鉄道立体化以外の対策の検討対象区間」が抽出されています。

10年以上前の計画ですが、現在もこの方針に沿って計画されています。

このうち「鉄道立体化の検討対象区間」には20区間(京王線は1路線とした)が抽出され、京王線(笹塚~仙川駅間)や西武線東村山駅付近など、実際に事業化あるいは事業化に向けた手続き中の箇所があります。

このなかで、JR南武線のうち矢川踏切~羽衣踏切間が抽出されています。

この区間には重点踏切4か所を含む計9か所の踏切があるほか、重点交差予定箇所踏切が2か所あるとされています。

なお、この区間外の立川側には1か所、川崎側には複数の踏切がありますが、この区間は鉄道立体化の検討対象区間には抽出されていません。ただし、「方針策定後、具体的に対策を検討するにあたっては、区間毎に地域特性が異なることなどから、本方針による区間の範囲に拘束されるものではない。」とされていることから、今後の検討状況でそれらの踏切も対象区間に含まれていく可能性もあります。

2018年9月28日追記:東京都のサイトが更新され、解消される踏切数14、延長約3.0kmとされました。仮に立川側の1つ目の踏切からすると、国立市役所の西側付近までが区間となります。

東京都の「事業候補区間」に

この区間は2012年(平成24年)9月に東京都の「事業候補区間」に選定されました。

これに伴い、東京都は2013年度(平成25年度)から事業範囲や構造形式の検討を行っているとしています。ただ、それ以降主だった動きはなさそうです。

『平成30年度 国の施策及び予算に対する東京都の提案要求』より抜粋

また、東京都は『国の施策及び予算に対する東京都の提案要求』で毎年、連続立体交差事業の推進を提案要求しています。この中の参考図でも事業候補区間になっているほか、「今後新たに事業化に取り組む箇所については必要な財源を確保すること」としています。

いわゆる「第四次事業化計画」の優先整備路線などが交わる

国立3・4・5号立川青梅線との交差予定箇所

東京都は2016年(平成28年)3月に『東京における都市計画道路の整備方針』いわゆる『第四次事業化計画』を策定し、今後10年間で優先的に整備すべき路線(優先整備路線)を選定しました。

この中で、鉄道立体化の検討対象区間には優先整備路線が2か所交差する予定です。

東西に横切る「国立3・4・5号立川青梅線」は西側の「立川3・4・5号新奥多摩街道線」とともに優先整備路線に選定されていて、国立市のさくら通り日野橋交差点を繋ぐ計画です。

国立3・4・15号中新田立川線との交差予定箇所

南北に横切る「国立3・4・15号中新田立川線」は北側の「立川3・3・30号立川東大和」とともに優先整備路線に選定されています。

この道路は多摩南北道路主要5路線のうちの一つ「立川東大和線」を構成する一部で、未整備の立川市内一部区間は事業化に向けた都市計画変更の手続きを行っています。

ちなみにこの2路線は「第三次事業化計画」でも優先整備路線に選定されていましたが、結局事業化されず、第四次事業化計画でも選定されまたという経緯があります。

かつてあった看板(2015年撮影)

これらの道路が通る都営矢川北団地には写真のような看板が掲示されていました。

いつごろ撤去されたのかわかりませんが、現在はありません。

矢川北団地は建て替えが進められ、既に新しい棟が完成しています。

立川南通り(立川3・5・6号国立昭島線)

立川南通りは南武線と踏切で交差しています。

激しい時では立川駅の南側付近まで断続的に渋滞していることもあります。

また、沿線には立川病院などの病院があります。

矢川駅東側の踏切

この踏切も重点踏切に選定されています。

この道路は都市計画道路ではありませんが、南武線を横断する、バスも通る道路です。

矢川駅はバリアフリー機能や耐震性などの問題から2011年(平成23年)に建て替えられ、現在の駅舎になりました。

国立市南部地域整備基本計画」では駅南側に広場を整備し、アクセス道路の整備もするなどの検討が行われています。

立川市のマスタープランで立体化が明記

立川市都市計画マスタープラン(平成29年6月改訂)には、南武線の立体化が明記され、 下記のように書かれています。

JR南武線の鉄道立体化の促進を図るとともに、それに合わせたJR西国立駅駅前の整備とにぎわいの創出を図ります。

立川市都市計画マスタープラン(平成29年6月改訂)

国立市のマスタープラン改訂で立体化が明記される予定

国立市が2003年(平成15年)に策定した都市計画マスタープランは、2011年(平成23年)に最初の改訂をおこない、現在、2回目の改定に向けて見直しを行っています。

その見直し原案が公表され、その中で新たに「JR南武線連続立体交差事業の推進」が明記されました。

また、上で書いた矢川駅南側についてもゾーンの改定が行われる予定です。

まだ原案のため、正式に改訂が決定しているわけではありませんが、今後、そのように改訂される模様です。

これまで、国立市では立体化の根拠となるようなものがほとんどなかったため、市議会でもあいまいな答弁が続いていたように思えます。また、議論もそれほど活発ではなかったように見えます。

しかし、ここに来て議会でも活発になってきたかなという感じで、機運も高まりつつあるように思えました。

関係あるかわからないけど・・・

谷保駅にエレベータを設置しバリアフリー化したときに、市の広報物にこんな記述がありました。(現在はネット上からなくなってる?)

上から2番目と3番目が気になるところです。

ちなみに、谷保駅は「鉄道立体化の検討対象区間」には含まれていませんが、谷保駅の南側も都市計画マスタープランの改定でゾーンの変化があるようです。

ちょっとだけ

矢川~谷保駅間の踏切

矢川~谷保駅間には人道踏切が複数あるほか、都市計画道路や都道も交わっています。「鉄道立体化の検討対象区間」にはこれらは含まれていませんが、これらの解消も同時に考えた方がいいのではないかと思ったりします。

国立市議会では

(前略)・・・鉄道立体化の検討対象区間として矢川から立川駅付近ということとしております。高架化にならない場所として、具体的には府中市域のところが掘割といいましょうか、地面の下を掘って交差をしているという、甲州街道なんかそういうことになっているんですけれども、そこから谷保駅に向かって上がってくるときに、谷保駅が高架になるということになりますと、勾配がかなりきつくなるということがございますので、物理的に勾配の関係で不可能であろうかなと。また、貨物列車が走っておりまして、こちらのほうにも一定の勾配のルールがございまして、そういったところの問題もあって、谷保駅の西側の都道との交差点のところの踏切、あるいはその西側のところでいう滝之院の踏切、そこからまた西側に行きますと小さな人道の踏切があるんですけれども、そこの部分のところは高架化がされないだろうなと。ただ、市役所西側の部分になりますと、国立市役所前の踏切というところがあります。ここでは、高架化になった場合、地面といいましょうか、道路と高架化になるところの桁というんでしょうか、すき間というか、空間というのでしょうか、これが確保できるかどうか、その辺のところが微妙なところかなと思いますけれども、それよりも西側、矢川駅の方向については地形的なこともございますけれども、高架化が可能であろうと考えているところでございます。

国立市議会平成29年第4回定例会

と、答弁があったり、すべてを鉄道の立体化で解消するのは難しいようです。(これを見ていると市役所西側の立川崖線部分で高架化するように見えるが(立体化も高架・地下化の構造形式もまだ決定していないはずだが)

参考:南武線を走る貨物列車

また、今年の都議会でも

建設局長

交差する幹線道路の整備計画が具体化いたしますとともに、地元市によります駅周辺のまちづくりが進められていることから、国に対しまして、着工準備に係る補助金を新たに要望し、事業化に向けまして一歩踏み出すことといたしました。 今後、構造形式や施工方法の検討を進めますとともに、地元市や鉄道事業者と連携し、事業化に向けまして積極的に取り組んでまいります。

都議会平成30年第1回定例会

と、あり、事業化に向けて進展するのかなと思います。

連続立体交差事業といっても、まだ都市計画決定もしていません。これから先は長いと思いますが、駅周辺のまちづくりの進展など起爆剤ともなりえる大きな事業です。今後も様子を見ていきたいと思います。

参考

国立市都市計画マスタープラン<第2次改訂版(原案)>について
国立市南部地域整備基本計画について
立川市都市計画マスタープランについて
・多摩地域における都市計画道路の整備方針(第三次事業化計画)
・東京における都市計画道路の整備方針(第四次事業化計画)
都市における道路と鉄道との連続立体交差化に関する要綱
・踏切対策基本方針
道路と鉄道の連続立体交差事業(直リンク)
平成30年度 国の施策及び予算に対する 東京都の提案要求
国立市議会 議会録
立川市議会 議会録
東京都議会 議会録

この記事は都市計画や今後のまちづくりを証明するものではありません。私個人による予測も多々含まれています。詳細は参考資料などをご確認ください。

コメント

  1. チャー より:

    矢川駅周辺の開発((矢川プラス(仮))が気になり、参考にさせてもらいました。わかりやすいです。その後どのくらい進展があったのか調べてみようと思います。

    • yunomi-chawan yunomi-chawan より:

      この記事を書いてから3年が経過し、都市計画マスタープランの改定やその他計画が進行しているようですので、調べてみてください。

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