横浜市「都市計画道路の優先整備路線」計画をウェブサイトからしれっと削除

横浜市が市のウェブサイトから、都市計画道路の優先整備路線』計画を削除していました。

『都市計画道路の優先整備路線』とは

計画の表紙

横浜市の『都市計画道路の優先整備路線』は、2008年5月に、「都市計画道路網の見直しの素案」と合わせて、2015年度頃までに約27kmの事業着手を目標に、着手時期を示した「優先整備路線」を策定し公表していました。

その後、2016年3月に、実際の着手が約4.5kmに留まったことから、事業中のすべての路線の完成目標を示すとともに、未着手となっていた優先整備路線について着手時期を明確にするため改定を行い、市のウェブサイトでも公表していました。

『都市計画道路の優先整備路線』から引用

『都市計画道路の優先整備路線』の改訂にあたっては、2015年11月13日から12月7日まで市民意見を募集し、横浜市会(市議会)への報告を行っていました。

ちなみに、既に削除されて見られなくなっているので、こちらに引用しますが、このような路線が優先整備路線になっていました。

市のウェブサイトからしれっと削除

公開されていた当時のウェブサイト

横浜市では、この『都市計画道路の優先整備路線』を市のウェブサイトに公表していました。

そのウェブサイトが、現在は削除されています

現在の横浜市のウェブサイトには、優先整備路線について記述されたページはどこにもなくなっています。また、削除した事実や理由等は一切説明がありません

現在のウェブサイトには、「新規事業化に向けて検討している箇所」というPDFは公開されているものの、「それ以外については、現在公表している情報はございません」と記載があります。少し前までこのような記述はありませんでした。

なぜ消したか問い合わせてみた

横浜市道路局企画課に問い合わせたところ、担当者をたらいまわしにされた挙句、このような回答がありました。電話での回答なので概要です。細かい言い回しは異なっているかもしれません。

Q.
「都市計画道路の優先整備路線」計画はウェブサイトから削除したので間違いはないか?
A.
現在は削除している。
Q.
いつ削除したのか。
A.
担当者がいないのでわからない。
Q.
私の記憶では2023年春頃に見た記憶があるが、それ以降か?
A.
そのくらいだと思う。
Q.
なぜ削除したのか?
A.
事業化の見込みが立たないことから、フラットに考え直すという意味でウェブサイトから掲載をなくした。
Q.
ウェブサイトから削除しただけか?計画は残っているのか?
A.
計画もない。優先整備路線についてお答えできるものはない。
Q.
平成28年(2016年)策定時には市議会への報告などが行われているようだが、削除するときにも報告したのか。
A.
していない。

ということで、本当に「しれっと」削除していました。

過去の説明と矛盾

都市計画道路の優先整備路線や着手目標を示すことは、特に法律で定められた義務ではありません。したがって公表をしないことで何か法に触れることはありません。

しかし、近隣自治体では、このような優先整備路線を策定し公表しているところが多くあります。

例:2025年11月時点
東京都と特別区、26市、2町
東京都と区市町が共同で『東京における都市計画道路の整備方針』を策定。優先整備路線などを示す。最新版は2016年3月策定の「第四次事業化計画」。(リンク
川崎市
事業個所の選定過程や予定箇所を『川崎市道路整備プログラム』として策定。最新版は2016年策定の『第2次川崎市道路整備プログラム』で、2022年2月に期間を延伸し、一部修正。(リンク
相模原市
相模原市新道路整備計画』を策定し、優先整備箇所を選定。最新版は2022年3月に策定した『第2次相模原市新道路整備計画』。(リンク
横須賀市
横須賀市都市計画道路整備プログラム』を策定し、市施行予定の都市計画道路について、短期整備路線、中期整備路線、長期整備路線に分類。(リンク
藤沢市
藤沢市道路整備プログラム』を策定し、市施行予定の都市計画道路について、優先着手区間などを選定。(リンク
さいたま市
さいたま市道路整備計画』を策定し、事業化予定路線などを選定。最新版は2025年4月策定のもの。リンク

改めて横浜市が2016年に策定していた『都市計画道路の優先整備路線』を見ると、優先整備路線は平成37年度(2025年度=令和7年度)までの事業着手を目指すとしていました。
また、「おおむね5年ごとに見直しをおこなってまいります。」と記載がありました。

実際のところ、2016年から5年が経過した2021年度には見直しは行っておらず、10年が経過した2025年度時点で計画そのものが抹消されています。

また、横浜市会(市議会)でも次のような答弁がされています。

手塚道路局長
(前略)なお、都市計画道路の優先整備路線については、今後、おおむね5年ごとに検証を行い、見直しを実施してまいります。
(2016年2月19日 建設・都市整備・道路委員会)

手塚道路局長
実は、平成27年のときもおおむね5年後ということでやってきたわけでございますが、諸般の事情でなかなかかなわない部分が非常に多くて今回また見直したわけでございますので、そういうことのないように、この5年間一生懸命取り組んでいきたいということ、委員の趣旨に沿えるように頑張っていきたいと思っております。
(2016年2月19日 建設・都市整備・道路委員会)

乾道路局長
昨今、財政が厳しい状況が続いてございます。今後策定されます次期横浜市中期4か年計画、または財政ビジョンなどの内容を踏まえまして、本市の発展、市民の皆様の安全安心に向けまして、優先整備路線の更新について検討していきたいと考えてございます。
(2021年10月11日 令和2年度決算第一特別委員会)

したがって、言っていることとやっていることが全く違います。
計画を抹消するのなら、策定したときと同じように意見を募集し、議会へ報告したうえで削除すべきだと考えます。あるいは、何か別の計画で補完する形で、公表の形式等を変えるというのはよくやる手法です。

計画うやむやは横浜市あるある

横浜市は計画をコロコロ変えたり、上位計画と下位である実施計画の整合性が取れていないことがよくある印象です。

例として『自転車活用推進計画』を見てみます。

2017年5月1日施行の自転車活用推進法では、都道府県は『都道府県自転車活用推進計画』を、市町村は『市町村自転車活用推進計画』を定めるよう努めなければならないとされており、定めた場合・変更した場合には、遅滞なく公表するよう努めるものとされています。したがって、法定の計画です。

横浜市自転車活用推進計画から引用

計画の内容については、各自治体で建付けは異なりますが、「自転車ネットワーク計画」や「自転車通行空間整備箇所」などを定めていることが多いです。

例:2025年11月時点
東京都
東京都自転車活用推進計画』を定め、その中で「自転車活用推進重点地区」を選定。さらに下位計画として『東京都自転車通行空間整備推進計画』を定め、優先整備区間を選定しています。いずれも都民の意見募集をしています。
町田市
町田市自転車活用推進計画』を定め、同計画の中で「自転車通行空間整備箇所」を示しています。また、実行計画として『町田市自転車ネットワーク計画』を定め、「自転車ネットワーク路線」を示しています。いずれも市民の意見募集をしています。
川崎市
川崎市自転車活用推進計画』を策定し、同計画の中で自転車ネットワークの構築を施策に掲げています。また、『川崎市自転車ネットワーク計画』を策定し、「自転車ネットワーク路線」を選定しています。いずれも市民から意見募集を行っています。
相模原市
相模原市自転車活用推進計画』を策定し、同計画の中で優先整備区間を選定しています。パブリックコメントを実施しています。

横浜市においても、2019年3月に『横浜市自転車活用推進計画』を策定しています。策定に当たってはパブリックコメントを行っています。また、法律施行より前の2017年3月に『横浜市自転車通行環境整備指針』を策定していました。指針の方の意見募集の有無は不明です。

『指針』では、駅周辺などを「重点エリア」に選定しています。また、重点エリアごとに『実行計画』を策定し、整備路線や整備形態を決定しています。重点エリア以外については、整備効果の高い路線等については整備を推進することとしています。
しかしながら、『指針』本文には、どこを重点エリアにするのか、個別具体的な言及はなく、実際に『実行計画』を策定されている重点エリアについても、どういう経緯で重点エリアになったのか、また、実行計画を策定した経緯や手段の説明がありません。

横浜市自転車活用推進計画から引用

横浜市自転車活用推進計画』においては、「横浜市自転車ネットワーク計画図」を定めて、自転車ネットワークと重点エリアを定めています。重点エリアは先の『指針』を引用する形を取っており、「横浜市自転車ネットワーク計画図は随時更新します」という文字が添えられています。

したがって、自転車ネットワーク路線を選定した路線個別の理由や、重点エリアの個別地区ごとの選定理由が一切わからず、変更に当たっては市民意見を反映しないものとなっています。
特にこのような計画図は、計画の核となる部分であるにも関わらず、市の意向でいつでもしれっと変更ができてしまう状態です。

また、この「横浜市自転車ネットワーク計画図は随時更新します」の文字は、パブリックコメントを実施した「素案」の段階では存在しませんでした。特にフォントの種類や文字の大きさが異なっているため、あとからしれっと追加した可能性が高いです。

このほか、上位計画と下位である実施計画の整合性が取れていないパターンでいえば、横浜市都市計画マスタープランの区別構想である『都市計画マスタープラン瀬谷区プラン(平成29年3月24日改定)』では、上瀬谷地区は緑農地域とされているにもかかわらず、準工業地域に用途地域変更しようとしている例もあります。『横浜市都市計画マスタープラン(全市プラン)』は、2025年5月に改訂し整合が取られましたが、前のプランでは怪しかったです。また、改定したことで、全市プランと区別プランで不整合が生じています。

まぁ、横浜市は別に住んでいるわけではないので何でもいいんですが、雑な市政運営していたら、刺されたとき困るのは市なんじゃないかって思いますけどね。ただ、市民や議会をないがしろにする運営は頂けないです。

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