長年疑問に思っていたことです。
なぜ、都市計画道路の「区分」には欠番があるのか・・・
都市計画道路とは
都市計画法では、道路、公園、水道などの都市施設を都市計画に定めることができるとされており、その都市計画決定された道路のことを一般に「都市計画道路」といいます。この世にあるすべての道路が都市計画で定められているわけではありません。
また、国道〇号や、県道〇線、市道〇線というのは、道路法に基づいて定められるもので別物です。さらには、○○通りや○○街道というのは、道路を便宜上わかりやすくするために付けている通称名称であったり、古くからの通称(例えば東海道なども)であったりと、都市計画道路とは別のものになります。
さて、その都市計画道路は一般にこのように書き表されます。
八王子都市計画道路3・3・2号東京八王子線
八王子3・3・2号東京八王子線
八3・3・2号東京八王子線
上の3つはすべて同じ意味です。1番上のものを省略したものが2番目、3番目のものになります。
この表し方には法則があり、
(都市計画区域名)(区分)・(規模)・(一連番号)号(路線名)
と、表します。
1番最初に都市計画区域の名称(上の場合は八王子都市計画区域)が入ります。都市計画区域とは「一体の都市として総合的に整備し、開発し、及び保全する必要がある区域」のことです。
※都内では1つの都市計画区域が1つの自治体であることも多いですが、多摩都市計画区域(多摩市・稲城市で構成)のように2つ以上の自治体がまとまっていることもあります。23区は23区全域で東京都市計画区域を構成しています。
そして、番号が中黒を挟んで3つ入ります。1つ目の番号は「区分」が、2つ目の番号は「規模」が、3つ目の番号には「一連番号」が入ります。
「区分」は下記の通り付けることとなっています。
1:自動車専用道路
3:幹線街路
7:区画街路
8:特殊街路(歩行者専用道、自転車道、自転車歩行者道)
9:特殊街路(都市モノレール専用道路)
10:特殊街路(路面電車)
「規模」は下記の通り付けることとなっています。
1:代表幅員40 m以上
2:代表幅員30 m以上40 m未満
3:代表幅員22 m以上30 m未満
4:代表幅員16 m以上22 m未満
5:代表幅員12 m以上16 m未満
6:代表幅員8 m以上12 m未満
7:代表幅員8 m未満
「一連番号」は広域的に統一されている路線もありますが(調布保谷線は「6」でそろえている等)、都市計画区域ごとに順に付けられています。
すなわち、上記で例として示した「八王子3・3・2号東京八王子線」とは、八王子都市計画の代表幅員22m以上30m未満の幹線街路であることを示しています。
ただし、東京都市計画区域や大阪都市計画区域の一部、大島都市計画区域はこれとは別の法則によって定めています。(今回は割愛)
区分の欠番
さて、上記の「区分」には欠番があります。2,4,5,6がないのです。なぜないのか、というのが今回のブログの本題です。
ここで2つの仮説を立ててみることとしました。
1つ目の仮説は「もともとあったが無くなった説」。
2つ目の仮説は「今後のために空けておいた説」。
です。検証してみました。
仮説① もともとあったが無くなった説
「もともとあったが無くなった説」を確かめてみます。
番号の付け方の根拠となった1969年通達
そもそも、この都市計画道路の番号の付け方は、『昭和44年9月10日建設省都計発第102号建設省都市局通達』によって定められました。この昭和44年(1969年)というのは、旧都市計画法を廃止して、現行の都市計画法が施行された年で、この通達もそれに伴うものでした。
通達の内容は以下の通りです。長いので該当部分のみ抜粋します。
都市計画法の施行について
昭和44年9月10日建設省都計発第102号
建設省都市局長通達
標記については、昭和44年6月14日付け建設省都計発第73号をもつて事務次官からその基本事項について通達されたが、都市計画法(以下「新法」という。)施行上の留意事項は、下記のとおりであるので、その施行に遺憾のないようにされるとともに、すみやかに貴管下関係機関に対し周知方取り計らわれたい。
(略)
Ⅳ 都市施設について
(略)
(2)道路の種別、構造及び名称の取扱い
①種別
道路に関する都市計画において定める種別は、自動車専用道路、幹線街路、区画街路及び特殊街路とされているが、その区別は次によること。なお、この区別は都市計画技術基準においても明らかにする予定である。
(i)自動車専用道路
都市高速道路、都市間高速道路、一般自動車道等もつぱら自動車の交通の用に供する道路
(ii)幹線街路
都市の主要な骨格をなす道路で、都市に出入する交通及び都市の住宅地、工業地、業務地等の相互間の交通を主として受けもち、近隣住区等の地区の外郭を形成する道路又は近隣住区の地区における主要な道路で、当該地区の発生又は集中する交通を当該地区の外郭を形成する道路に連結するもの
(iii)区画街路
近隣住区等の地区における宅地の利用に供するための道路
(iv)特殊街路
(イ) もつぱら歩行者の交通のように供する道路
(ロ) もつぱら自動車の交通の用に供する道路
②構造
(略)
③名称
道路に関する都市計画において定める名称は番号及び路線名とし、番号の付し方は以下の凡例に示すところによること。ただし、全体的な道路網の検討による都市計画の決定又は変更までの間は、従来の都市計画標準による路線番号(等級、種別及び番号)を付することも差しつかえないこと。
凡例 番号の付し方
○・○・○○
区分 規模 一連番号
(i)区分
区分1 自動車専用道路
区分3 幹線街路に相当するもの
区分7 区画街路
区分8 特殊街路イ)に相当する歩行者専用道
区分9 特殊街路ロ)に相当する自転車道
(ii)規模
規模 幅員の範囲
1 幅員40メートル以上のもの
2 幅員30メートル以上40メートル未満のもの
3 幅員22メートル以上30メートル未満のもの
4 幅員16メートル以上22メートル未満のもの
5 幅員12メートル以上16メートル未満のもの
6 幅員8メートル以上12メートル未満のもの
7 幅員8メートル未満のもの
(iii)一連番号
当該都市計画区域ごとに、区分ごとの一連番号を付すること
(後略)
※この通達はのちに改正されており、現在は一部異なっています(下記等)。
区分8 特殊街路アに相当する歩行者専用道、自転車専用道または自転車歩行者専用道
区分9 特殊街路イに相当する都市モノレール専用道等
区分10 特殊街路ウに相当する路面電車道
すなわち、新しい都市計画法になった1969年の時点で「2,4,5,6」は欠番となっていました。
旧都市計画法のときはどうだったのか
それでは、旧都市計画法のときはどうだったのでしょうか。旧都市計画法時代はこれとは別の方法で名称をつけていました。
現在では、ほとんどの都市計画道路が新都市計画法の通達に基づく名称となっていますが、1969年通達では、「全体的な道路網の検討による都市計画の決定又は変更までの間は、従来の都市計画標準による路線番号(等級、種別及び番号)を付することも差しつかえない」と書かれています。一例として、東京都では1989年に一斉に新都市計画法の通達に基づく番号に変更しており、1969年の新都市計画法施行から一定期間、新法下で旧法の番号が付けられていました。となると、旧都市計画法と新都市計画法で同じ番号を使っていると混乱のもとになる可能性もあるので、避けたのではないかという説もあるかなと考えました。
旧都市計画法の法則は下記の通りです。
広路 | 44メートル以上 | |
1等大路 | 第1類 | 36メートル以上 |
第2類 | 29メートル以上 | |
第3類 | 22メートル以上 | |
2等大路 | 第1類 | 18メートル以上 |
第2類 | 15メートル以上 | |
第3類 | 11メートル以上 | |
1等小路 | 7メートル以上 | |
2等小路 | 4メートル以上 |
この後ろに一連番号や路線名が付き、「1等大路第2類第○号線」や「1等大路第2類第○号△△線」という風に書きました。大路については、「1・2・10号△△線」や「2・1・5号△△線」のように書くことも頻繁にありました。
よって、旧都市計画法では、欠番「2」が使われてはいるものの、新都市計画法で旧都市計画法時代の番号を避けた説は考えにくいと言えます。
したがって、「仮設① もともとあったが無くなった説」は当たらないと言えるでしょう。
仮説② 今後のために空けておいた説
それでは2つ目の仮説、「今後のために空けておいた説」を検証していきます。
ただ、この説は、1969年の新都市計画法の通達から半世紀経っても欠番のままで、かつ、現時点でも欠番を使用する話もないことから、どこかにそのことが明記されていない限り立証は非常に難しいです。
結局、明記されたものは見つかりませんでした。
海外の道路の分類
よくわからないので、国土交通省都市局に問い合わせたところ、こんな回答がありました。
欠番になっている理由はわからない。過去の担当の間でも不思議に思っていた1つである。
国土交通省としての見解ではなく、一担当者の予測に過ぎないが、新法になる際に、『都市計画道路の計画標準』を作成しようという試みがあり、都市計画協会の書籍にまとめられている。その書籍の中に、先進国の都市計画道路の比較表があり、その表の区分の最大値が9つで、そのうち自動車専用道路の区分が2つ、幹線道路の区分が4つで、欠番となっている数とぴったりと合う。
この『計画標準』は1968年に作成作業を開始し、1974年にまとめられた。通達はその途中の1969年に出されており、計画標準をまとめた後に追加できるように空けておいたのではないか。
※電話のメモを書き起こしたものなので、文言は異なります。
その『都市計画道路の計画標準』というのがこの本です。1974年9月1日に都市計画協会が発行したものです。
この本の「まえがき」には、この本をまとめるに至った経緯が書かれています。重要そうなので、下記に抜粋します。
まえがき
都市計画の策定に際しては、多方面の分野にわたる詳細な検討を必要とし、従来より行政面では、通達等により計画標準を定め、細部については運用により補完してきた。しかし、近年、都市計画の重要性が高まりつつあるため、新しい標準とその詳細な解説の作成が強く望まれるようになってきている。
都市計画法では、第13条第4項において、都市計画に関する技術基準は政令で定めることとされており、現在、都市計画全般にわたる技術的基準の作成作業が進められているところである。一般に、都市計画における技術的基準は他の構造物等に関する基準とは異なり、理念的な要素が主体であり、政令としての成文化が難しい面をもっっている(ママ)。都市計画道路についても、その技術的基準を政令として定める作業については、まず、技術的基準として考慮しておかなければならない事項のすべてを網羅した計画標準を作成し、つぎに、これらのうち基本的な事項について、政令に定めることとするのが妥当であると考えられる。
このため、まず都市計画道路の計画標準の作成を行うこととなり、昭和43年に作業を開始し、4か年にわたり、資料収集、原案作成をおこなったのち、都市計画協会に「都市計画道路計画標準策定委員会」を設置し、内容検討を行ない。(ママ)昭和48年末に成案を得るに至った。
本書は、この成案に詳細な解説を加えて、図書として刊行したものである。
(後略)
※この中で、「第13条第4項」とあるのは、現在は改正により文章は変更せず「第13条第6項」になっています。
そして、本書の「第4章 道路の計画と設計」の中の「1.都市道路の分類」において、都市道路を次の6つに分類できるとしています。
1)自動車専用道路
比較的長いトリップの交通を処理するため、設計速度を高く設定し、車両の出入り制限を行ない、自動車専用とする道路
2)主要幹線道路
都市間交通や通過交通等の比較的長いトリップの交通を、大量に処理するため、高水準の規格を備え、高い交通容量を有する道路
3)幹線道路
主要幹線道路および主要交通発生源を有機的に結び、都市全体に網状に配置され、都市の骨格および近隣住区を形成し、比較的高水準の規格を備えた道路
4)補助幹線道路
近隣住区と幹線道路とを結ぶ集散道路であり、近隣住区内での幹線としての機能を有する道路
5)区画道路
沿道宅地へのサービスを目的とし、密に配置される道路
6)特殊道路
もっぱら、歩行者、自転車、モノレール等、自動車以外の交通の用に供するための道路
そうしたうえで、都市計画標準における分類、1969年都市局長通達、イギリスのRoads in Urban Area、アメリカのHighway and Street Standard 及び Fandamentals of Traffic Enginneringの5つの分類の比較表が記されています。
これが都市局担当の言う比較表と思われ、確かに、自動車専用道路は最大値が2、幹線街路(道路)は最大値が4になっています。この自動車専用道路が区分1・2に、幹線道路が3・4・5・6に入るとすると、確かに偶然にしてはピッタリとはまりすぎます。ただ、区画道路も最大値は2となっていて、これはどうなっているんだ……と思わなくもありません。(クルドサックはこんな道路で、日本では本の一部に再現されるにとどまっているため、無視している可能性もあります)
この表が欠番がある理由であるかと問われると、「そうです」とは言い切れない気がします。
その他の可能性を探る
その他の可能性が無いのか、『都市計画道路の計画標準』を読み進めました。
ところで、道路は道路構造令という政令に基づいて設計されています。(ただし現在は、高速自動車国道と国道を除き、各道路管理者である地方公共団体が道路構造令を参酌して、条例で道路構造の技術的基準を定めることとなっています。)道路構造令では、道路を第1種~第4種の4つに区分しており、この区分の中で交通量によって第○級に分類されます。要するに、「第4種第1級」の道路といったような分類がされています。
前述の通り、『都市計画道路の計画標準』においては、都市道路を自動車専用道路、主要幹線道路、幹線道路、補助幹線道路、区画道路、特殊道路の6つに分類しており、これらは以下のように区分されると記載がされています。
一般的に道路構造令第3条第1項において、都市道路の規格として自動車専用道路は第2種、主要幹線道路、幹線道路、補助幹線道路、区画道路は第4種であるが、自動車専用道路のうち、都市間高速道路は第1種、主要幹線道路のうち市街化調整区域部等は第3種である。
これを原則的な対応として記したのが上記枠下部の表4-1-3であると記載されています。
自動車専用道路 | 都市間高速道路およびその他 | 第1種 |
都市高速道路 | 第2種 | |
主要幹線道路 | 地方部 | 第3種 |
都市部 | 第4種(第3種) | |
幹線道路 | 第4種 | |
補助幹線道路 | 第4種 | |
区画道路 | 第4種 | |
特殊道路 | ー |
これを単純化すると上のような表になると思われ、自動車専用道路は2つに、幹線道路は主要幹線道路~補助幹線道路の4つに分類できます。この自動車専用道路が区分1・2に、幹線道路が3・4・5・6に入るとすると、これもぴったりとはまります。
ただ、現在の道路構造令は、高速自動車国道及び自動車専用道路以外の道路は、地方部が第3種、都市部が第4種と分類されています。上の表では、主要幹線道路には第3種が記載してあって、幹線道路や補助幹線道路に第3種が無い理由がよくわかりません。(都市計画道路はそもそも都市部に決定されるため?)
結局のところ
結局のところ、欠番の理由ははっきりはしません。ただ、今後のために空けておいたんじゃないかなぁぁぁ・・・?というのが私の推測です。
ちなみに、都市計画公園についても、都市計画道路と同様に番号で名称を決めることになっていて、現在では、その区分は2,3,4,5,6,7,8,9となっていて、1番が欠番となっています。これが1969年の通達当時は、2,3,5,6,7,8で、1番と4番、9番が欠番となっていました(9番を欠番と言っていいのかはよくわからないが)。その後の通達の改正で、4番=地区公園、9番=広域公園が追加され現在に至っています。(2~9まで誘致距離が順に大きくなるので、1番はプレイロット的な小さなものを入れようとしてたんですかね。)
こうしたことを踏まえると、都市計画道路においても、「今後のために空けておいた説」はあっているような気はしなくもありませんが、空けておいたところに何が入るはずだったのかは謎のままです。
参考文献等
- 建設省都市局都市計画課, 都市計画法令要覧 昭和46年版, 株式会社帝国地方行政学会, 1971
- 建設省都市局都市計画課, 都市計画法令要覧 平成3年度版, 株式会社ぎょうせい, 1991
- 都市計画道路標準策定委員会, 都市計画道路の計画標準, 財団法人都市計画協会, 1974
- 公益社団法人日本道路協会, 道路構造令の解説と運用(改訂版), 2015
都市局のご担当者様へ
国会期間中のご多忙な中、お調べいただきましてありがとうございました。
この謎について、理由をご存知の方がいらっしゃいましたら、教えてください。
コメント
詳細かつ論理的な調査結果、大変勉強になりました。
ありがとうございます。